事業構想にあたってはアイデアを創出したり、調査したり、検索したり、深く考えたり、まとめて言語化したり、様々なタスクがあります。

皆さんこんにちは!事業構想×生成AI活用アドバイザー(中小企業診断士)の津田です。

今回は事業構想を作る作業において生成AIを活用するテクニックの基本的な考え方をご紹介します。

なお、当シリーズではメインにGemini(Google)有料、ChatGPT(有料)を使っていきます。

最近は出来ることも増えてきましたので、この2つがあれば十分ですが、必要に応じて、その他のツールは無料版を活用していきます。

事業構想のプロセスにおいて、生成AIは主に以下の5つのタスクでその能力を発揮します。

(1)調査・情報収集

市場の最新トレンド、競合企業の動向、ターゲット顧客のニーズやインサイトなど、Web上のテキスト情報だけでなく、PDFなどのドキュメント、会議やインタビューの音声記録、YouTube動画の内容、さらにはXやInstagramといったSNS上の公開情報など、多様なソースから必要な情報を効率的に収集・整理します。

(2)アイデア発想・壁打ち

新規事業のアイデア出し、既存事業の課題解決策のブレインストーミング、あるいは自身の考えに対する客観的なフィードバックを得るための「思考の壁打ち相手」として活用します。

(3)分析・構造化

収集した多様な情報(テキスト、ドキュメント、音声、動画の要約、SNS投稿データなど)やブレストで出たアイデアを分類・整理し、SWOT分析、3C分析などのフレームワークを用いて分析したり、複雑な思考を論理的に構造化したりする手助けをします。センチメント分析(感情分析)なども可能です。

(4)要約・言語化

長文のレポートや記事、PDF資料、会議の音声記録、動画の内容などの要点を素早く抽出したり、頭の中にある漠然としたアイデアや構想を、他者に伝わる具体的な「言葉」として表現したりするサポートをします。

(5)推論・シミュレーション

収集したデータや設定した条件に基づき、市場の将来予測、新しいビジネスモデルを導入した場合の影響などを推論・シミュレーションし、意思決定の質を高めます。

これらのタスクを理解し、目的に応じて使い分けることが、生成AI活用の第一歩です。

現在、様々な生成AIモデルやツールが登場していますが、それぞれに得意・不得意があります。

事業構想のタスクに応じて最適なものを使い分けることで、より高い成果が期待できます。

(1)創造性・壁打ち・長文処理

Claude 3.7 Sonnet (Anthropic)

自然で人間らしい対話が得意。複雑な文脈理解や長文の生成・要約、アイデアの壁打ち相手として優れています。倫理的な配慮も特徴。

Gemini 2.5 Pro (Google)

長いコンテキストウィンドウを持ち、複雑な対話や長文の読解・生成にも高い能力を発揮。創造的なブレストの相手としても有用。

(2)分析・論理構成・複雑な指示理解・高度な推論

GPT-4o (OpenAI)

高度な論理的思考力と複雑な指示への対応力が強み。分析、計画策定、文章構成、コード生成など幅広いタスクで高い性能を発揮します。

o1 / o3 (OpenAI)

GPT-4oをさらに進化させ、特定のタスク(特に推論や複雑な問題解決)において最高レベルの性能を目指すモデル群。

API利用コストは高くなる傾向がありますが、高度な分析や戦略立案で力を発揮します。

Gemini 2.5 Pro (Google)

高度な推論能力を持ち、複雑な情報の分析や構造化にも対応。特に大量の情報を統合して分析する際に力を発揮。

(3)最新情報・Web連携・深掘り調査・マルチモーダル処理

Gemini 2.5 Pro (Google)

Google検索と連携し、最新の情報へのアクセスや広範な知識が強み。特にDeep Research機能は、特定のテーマについて深く掘り下げた調査・分析レポートの生成に役立ちます。

PDFなどのドキュメントファイルを直接アップロードして内容を分析・要約したり、音声データを処理(文字起こし、要約など)したりする能力は事業構想において強力な武器となります

例:

業界レポートPDFの分析、会議音声の要約、さらに、YouTube動画のURLを指定して内容を理解・要約したり、公開されているSNS(X等)の情報を分析したりすることも可能です。(※SNSデータの利用はAPI規約等に注意)Google Workspaceとの連携も魅力

Perplexity

対話形式で情報源を明示しながらリサーチを進められるのが特徴。情報の信頼性を重視する場合や、特定の質問に対する回答を深掘りしたい場合に有効です。

GenSpark

リサーチやアイデア生成に特化したツールとして設計されており、特定のワークフローに沿って効率的に作業を進めたい場合に選択肢となります。(※具体的な機能はツールにより異なります)

(4)UIプロトタイピング支援

v0 (Vercel)

テキストによる指示からWebインターフェースのプロトタイプ(HTML/CSSコードなど)を生成。アイデアを素早く可視化したい場合に役立ちます。(※主に後のフェーズで活用)

(5)リアルタイム翻訳・グローバル展開支援

Felo

高度なリアルタイム翻訳機能を提供。海外市場調査やグローバルなコミュニケーションが必要な場合に強力なサポートとなります。(※必要に応じて活用)

(6)動画生成(コンセプト視覚化など)

Sora (OpenAI)

テキストから高品質な動画を生成する最先端モデル。

事業コンセプトやサービスのイメージを動画で具体化するなど、将来的な活用が期待されます。(※現時点ではアクセスが限定的な場合があります)

他にもGrok、NotebookLM、Deep Seekなど多数あります。

例えば、最新の市場トレンド調査にはWeb連携に強いGeminiやPerplexityが適していますが、複雑なビジネスモデルの収益性シミュレーションには高度な推論能力を持つo1/o3やGPT-4oが向いています。

大量のPDF資料や会議音声を分析する必要があるならGemini 2.5 Pro、応答速度が重要ならGemini Flash、自然な壁打ちならClaudeが良いでしょう。

このように、タスクの性質に合わせて最適なモデルやツールを選択することが、質の高いアウトプットを得るための鍵となります。

もちろん、これらのツールは日々進化しており、一つのツールが複数の領域をカバーすることも増えています。

最新情報をキャッチアップしつつ、実際に試してみて自分に合ったものを見つけることが大切です。

(1)データアクセスと規約

XやInstagramなどのSNSデータ分析にはAPI利用制限や規約の遵守が必要です。

YouTube動画も著作権に配慮が必要です。

生成AIツールについても規約を確認して利用するようにしてください。

(2)プライバシー

個人のプライバシーに関わる情報(非公開の音声、DMなど)の分析は避け、公開情報や同意を得たデータのみを扱いましょう。

(3)AIの能力限界

動画や音声の完全な理解・分析はまだ発展途上です。

テキスト情報に比べて誤解や情報の欠落が起こりやすいため、重要な分析には文字起こしデータなどを併用することも有効です。

生成AIの能力を最大限に引き出すには、的確な「指示(プロンプト)」を与えることが不可欠です。質の低いプロンプトからは、質の低い回答しか得られません。

(1)明確な指示 (5W1H)

 「誰が」「何を」「いつ」「どこで」「なぜ」「どのように」を意識し、AIに何をしてほしいのか具体的に伝えます。

(2)役割(ペルソナ)設定

AIに特定の専門家(例:「あなたは経験豊富なマーケターです」)や立場になりきってもらうことで、より的確な回答を引き出せます。

どういう役割を設定すれば良いかは、プロンプトで達成したい目的によって変わってきます。以下に例を挙げます。

① 専門的な分析やアドバイスが欲しい場合: その分野の専門家や職業を指定するのが効果的です。

例:「経験豊富な市場アナリスト」「技術コンサルタント」「財務アドバイザー」「人事部長」「ベテランのウェブデザイナー」など。

特定の顧客層の視点や感情を知りたい場合:ターゲット顧客像(ペルソナ)そのものを役割として与えます。(これはn1思考プロンプトに近い使い方です)

例:「都内在住、30代の子育て中のワーキングマザー」「新しいガジェット好きの大学生」「健康意識の高い60代の男性」など。

アイデア発想や多角的な意見が欲しい場合: 特定の思考様式を持つ役割を与えることも有効です。

例:「非常に楽観的な起業家」「リスクを重視する慎重な評論家」「常識にとらわれないアーティスト」「未来予測の専門家」など。(役割演技プロンプトでよく使います)

特定のタスクを実行してほしい場合: そのタスクを実行する役割を指定します。

例:「優秀なコピーライター」「ビジネスプランナー」「プロジェクトマネージャー」「インタビュアー」など。

つまり、「どんな人に答えてほしいか」「どんな視点からの回答が欲しいか」を考えて、それに最も近い役割をAIに与える、と考えると良いでしょう。

(3)出力形式の指定

回答の形式(例:箇条書き、表形式、レポート形式、メール文面)を指定することで、望む形のアウトプットを得やすくなります。

(4)制約条件の設定

文字数、トーン&マナー、含めてほしい/ほしくない要素などを指定することで、回答の精度を高めます。

(1)ハルシネーション(もっともらしい嘘)への警戒

生成AIは、事実に基づかない情報を生成することがあります。

特に重要な情報については、必ず複数の情報源でファクトチェックを行う習慣をつけましょう。

Perplexityのように情報源を示すツールを活用するのも有効です。

(2)ファクトチェックの徹底

生成AIは事実に基づかない情報を生成することがあります。

特に重要な情報(統計データ、法律、専門知識など)については、必ず複数の信頼できる情報源で裏付け(ファクトチェック)を取りましょう。

(3)情報源の要求

AIに対して、回答の根拠となる具体的な情報源や出典を提示するように指示します。

(例:「回答には必ず信頼できる情報源へのリンクを含めてください」)Perplexityのように情報源を標準で示すツールを活用するのも有効です。

(4)自己評価・確信度の確認

AIに回答の確からしさ(自信度)を自己評価させたり、「不確かな情報についてはその旨を明記してください」と指示したりすることも、ハルシネーションを見抜く一助になります。

(5)段階的な質問(CoT応用)

複雑な情報を一度に尋ねるのではなく、「まず〇〇について教えてください。

次にその根拠となるデータは?」のように、段階的に質問し、その都度根拠を確認していくことで、誤った情報が紛れ込むリスクを減らせます。

(6)質問の仕方によるバイアスの排除

曖昧な質問はAIに「創作」の余地を与えがちです。また質問の仕方が誘導的だと、偏った回答が返ってくる可能性があります。

客観的な事実を問うように心がけましょう。

できるだけ具体的に、必要な情報の範囲を限定して質問することもハルシネーション抑制に繋がります。

例:

「最新の市場動向」ではなく、

「2025年第1四半期の〇〇市場における主要プレイヤーの動向について、公開されているレポートを基に教えてください」

(7)著作権・引用ルールの遵守

AIが生成した文章やアイデアを利用する際は、著作権に配慮し、必要に応じて引用元を明記するなど、適切な対応が必要です。

参考:文化庁著作件課「AIと著作権」

基本原則に加え、以下のテクニックを使うことで、AIとの対話をより深化させ、思考をブーストすることができます。

AIに特定のペルソナ(例:ターゲット顧客、競合企業の担当者)になりきらせ、「私は〜と感じる」「私が〜する理由は…」といった一人称視点で語らせる手法。

ターゲット顧客の深層心理や未言語化ニーズの理解、競合の思考パターンの推測、より共感性の高いコミュニケーション案の作成に役立つ。

指示例: 「あなたは[ペルソナの詳細:例:都内在住、30代、子育て中のワーキングマザー]です。普段の買い物で最もストレスを感じるのはどんな時ですか?その理由と合わせて、一人称で答えてください。」

AIに自身の回答生成プロセス、思考の根拠、参照した可能性のある情報パターンなどを説明させる手法。AIに「自分の思考について考えさせる」イメージ。

AIの回答の信頼性や論理構成を評価する手助けになる。AIの思考バイアスや考慮漏れに気づきやすくなり、より客観的な判断を促す。

指示例: 「先ほど提案してくれた[事業アイデア]について、どのような思考プロセスでその結論に至りましたか?特に重視した要素と、他に検討した代替案があれば教えてください。」

複雑な問題や多段階の推論が必要な問いに対し、AIに「ステップバイステップで考えてください」と明示的に指示し、思考の過程を順を追って出力させる手法。

最終的な回答だけでなく、そこに至るまでの論理的な道筋を確認できるため、回答の精度が向上し、誤りを発見しやすくなる。複雑な課題の分解にも役立つ。

指示例:「[市場データA]と[競合データB]を踏まえ、当社の新製品Cの初年度売上目標を設定するための思考プロセスを、ステップバイステップで示してください。」

AIに段階的に思考させ(シンキングセクション、CoT活用)、その生成内容を自己評価・批判させ(リフレクションセクション)、見つかった改善点を反映して最終的な回答を出力させる(アウトプットセクション)という構造化されたプロンプト手法。

AI自身の能力を活用して回答の質を大幅に向上させる。思考プロセスが透明化され、客観性が担保され、潜在的な問題点や改善点を効率的に発見できる。ハルシネーションの抑制にも繋がる。

指示例:

# 指示
あなたは経験豊富な経営コンサルタントです。以下の手順に従って、[課題:例:中小企業のDX推進における課題]に対する解決策を提案してください。

## 1. シンキングセクション (Thinking)
まず、この課題の根本原因をステップバイステップで分析してください。

## 2. リフレクションセクション (Reflection)
次に、上記シンキングセクションでの分析内容について、以下の観点から自己評価・批判してください。
- 分析に見落としはないか?
- 前提条件に誤りはないか?
- もっと考慮すべき別の視点はないか?
- 導き出した原因は本当に根本的なものか?

## 3. アウトプットセクション (Output)
最後に、リフレクションセクションでの考察を踏まえ、課題解決のための具体的な戦略を3つ提案し、それぞれのメリットとデメリットを簡潔に説明してください。

AIに対して、求めるアウトプットの具体的な「良い例(ショット)」を2〜3個提示することで、AIにその形式、スタイル、質、論理構造などを学習させ、期待に近い回答を生成させるテクニック。

指示だけでは伝わりにくいニュアンスやアウトプットの質感をAIに理解させることができる。特定のタスクに対するAIの応答精度を高める。

指示例: 「以下のような形式で、新サービスのメリットを顧客に伝えるキャッチコピーを作成してください。

例1:『〇〇で、あなたの△△が□□に変わる。』

例2:『もう△△で悩まない。〇〇がもたらす□□な毎日。』当社の新サービス『[サービス名]』の[主な特徴]を踏まえて、同様の形式でキャッチコピーを3つ作成してください。」

AIが出した回答に対して、「なぜそう言えるのですか?」「その根拠は何ですか?」「具体的にはどういうことですか?」「他にはどんな可能性がありますか?」「もし[条件]が変わったらどうなりますか?」といった追加の問いかけを継続的に行う手法。

表層的な回答や一般論から一歩踏み込み、AIの思考の深層を探る。前提条件の確認、論理の飛躍の発見、代替案の検討などを促し、より本質的な理解や洞察を得る。

指示例: (AIが「〇〇が重要です」と回答した後)「なぜ〇〇が特に重要だと考えたのですか?その具体的な理由を3つ挙げてください。

一つのAIに複数の役割(例:楽観的な事業推進者、慎重なリスク管理者、顧客視点の担当者、技術専門家)を順番に演じさせたり、あるいは複数のAI(異なるモデル)にそれぞれ役割を与えて議論させたりする手法。

一つの視点に偏りがちな思考を強制的に多角化し、アイデアや計画に対する賛否両論、異なる立場からの意見、潜在的なリスクや機会などを幅広く引き出すことができる。

指示例: 「[新規事業案X]について、まず楽観的な事業推進者の視点からその魅力を最大限に語ってください。次に、非常に慎重なリスク管理者の視点から考えられる主な懸念点を3つ挙げてください。」

意図的に厳しい制約条件(例:予算は通常の半分、開発期間は3分の1、利用可能なリソースは〇〇のみ、特定の技術は使用禁止)を設定してAIにアイデアや解決策を考えさせる手法。

現実的な制約下での実行可能性の高いアイデアを引き出す。既存の枠組みにとらわれない、創造的で効率的な解決策(いわゆる「逆境からのイノベーション」)を誘発する可能性がある。

指示例: 「現在の計画予算の半分で、[マーケティング目標Y]を達成するための、従来とは異なる斬新なアプローチを3つ提案してください。それぞれのメリットとデメリットも示してください。」

複雑な問題に対し、AIに複数の思考経路(解決策の選択肢やアイデアの分岐)を同時に探求させ、それぞれの経路の妥当性を評価させながら最終的な結論や提案に至らせる手法。CoTが一本道なら、ToTは複数の道を同時に探るイメージ。

多角的な視点からの網羅的な検討が可能になり、単一経路では見逃しがちな選択肢やリスクを発見できる。より創造的で頑健な問題解決策を見つけ出すのに役立つ。

指示例: 「[事業課題Z]について、考えられる解決策の方向性を3つ挙げてください。それぞれの方向性について、具体的なアクションプラン、予想される効果、潜在的なリスクを段階的に評価し、最終的に最も推奨される解決策とその理由を提案してください。」

AIに一度回答を生成させた後、「その回答の弱点は?」「もっと良くするには?」「論理的な矛盾はないか?」「異なる視点はないか?」「バイアスはかかっていないか?」といった観点から自己評価させ、その上で改善版を再生成させる手法。

AI自身の能力を活用して回答の質を向上させる。生成された内容の客観性を高め、潜在的な問題点や改善点を効率的に発見できる。

指示例: 「[アイデアA]について説明してください。その後、その説明の不明瞭な点、論理的に弱い部分、読者が疑問に思う可能性のある点を自己評価し、より分かりやすく説得力のある説明に修正してください。」

ある課題や状況(例:自社のビジネスモデル)に対し、全く異なる分野の事例や概念(例:自然界の生態系、スポーツチームの戦略、歴史上の出来事)との構造的な類似点(アナロジー)をAIに探させ、そこから新しい視点や解決策のヒントを引き出す手法。

既存の業界の常識や固定観念から脱却し、斬新なアイデアやビジネスモデルを発想するきっかけとなる。複雑な問題をよりシンプルに理解する助けにもなる。

指示例: 「当社のサブスクリプションサービスの顧客維持率向上の課題を、人気のあるオンラインゲームがプレイヤーを引きつけ続ける仕組みに例えると、どのような共通点や応用可能なアイデアが見つかりますか?具体的な施策を3つ提案してください。」

目標達成の方法を直接考えるのではなく、「どうすればこのプロジェクトは確実に失敗するか?」「顧客が絶対に離れていく理由は何か?」「最悪のシナリオとその原因は?」といった逆の視点からAIに考えさせる手法。

成功のために避けるべき落とし穴や、見落としがちな潜在的リスク、事業の弱点を明確に洗い出すことができる。結果的に、成功確率を高めるための重要な要素(KSF: Key Success Factor)を特定するのに役立つ。

指示例: 「これから立ち上げる[新規サービスB]が、1年以内に市場から撤退するという最悪のシナリオを想定してください。そのシナリオを引き起こす可能性が最も高い原因を5つ挙げ、それぞれの対策案も簡単に考えてください。」

意図的に現在の文脈とは無関係な単語、画像、コンセプト(ランダムな刺激)をAIに提示し、それと事業テーマ(例:新しいアプリの機能)を強制的に結びつけさせて新しいアイデアを発想させる手法。「セレンディピティ(偶然の発見)」を意図的に誘発する。

既存の思考の枠組みを壊し、予想外で斬新、クリエイティブなアイデアを生み出す可能性を高める。アイデアが行き詰まった時の突破口になることがある。

指示例: 「『高齢者向けの健康管理アプリ』の新しい機能についてアイデアを出しています。ここにランダムな単語『深海魚』を提示します。この単語からインスピレーションを得て、ユニークで役立つ可能性のあるアプリ機能を3つ提案してください。

AIに答えや解決策を直接提供させるのではなく、優れたビジネスコーチやソクラテスのように、利用者の思考を深掘りし、内省を促し、自ら本質的な課題や答えにたどり着けるような、鋭い質問を投げかけるよう指示する手法。

利用者自身の気づきや学びを最大化し、主体的な問題解決能力を高める。表面的な問題ではなく、より根本的な課題や動機にアプローチできる。

指示例: 「私は[事業上の課題C:例:チームのモチベーションが低い]について悩んでいます。私に解決策を提示するのではなく、私がこの課題の根本原因を深く理解し、自分自身で有効な打ち手を見つけるために役立つような、本質を突く質問を5つしてください。」

既存のアイデアやコンセプト(例:基本的なサービスモデル)に対し、「もし〜だったら?(What if…?)」「これを〜と組み合わせたら?」「これを極端に(増やす/減らす/逆にする)したら?」「別のターゲットに応用したら?」といった多様な問いかけを通じて、アイデアの可能性を多角的に拡張させる手法。SCAMPER法などに近い考え方。

一つのアイデアを深掘りし、その応用可能性、新しい切り口、潜在的な価値などを多角的に探ることができる。アイデアをより豊かでユニークなものに発展させる。

指示例: 「『地域特産品専門のECサイト』という基本的なアイデアがあります。このコンセプトを以下の観点から拡張し、それぞれ新しいビジネスアイデアを提案してください。(1)もし購入者が生産プロセスに参加できたら? (2)もしAIが個人の好みに合わせて究極の詰め合わせを提案したら? (3)もしターゲットを海外の富裕層に特化したら?」

これらのテクニックを状況に応じて使い分けることで、AIとの対話はより戦略的で、創造的で、深い洞察に満ちたものになります。

次回からの実践編に向けて

今回は、事業構想における生成AI活用の基本として、5つの主要タスク(多様な情報ソースからの活用を含む)、タスクに応じたAIモデル/ツールの使い分け(最新モデル情報、ドキュメント・音声・動画・SNS分析能力を含む)、そしてAIの能力を引き出すためのプロンプトの基本原則と15の高度なテクニックをご紹介しました。

これらの知識は、いわば生成AIという強力なパートナーを使いこなすための「取扱説明書」であり「応用テクニック集」です。

次回からは、いよいよこの武器を手に、事業構想の具体的なプロセス(ビジネスアイデアの発想からビジネスモデルの構築まで)において、どのようにAIを活用していくのか、実践的なステップとプロンプト例を交えながら解説していきます。

今後のシリーズ予定

本シリーズでは、以下のテーマで事業構想プロセスにおける具体的なAI活用法を深掘りしていきます。

  • 【第3回】 生成AIと創るビジネスアイデア:発想から言語化まで
  • 【第4回】 顧客解像度を爆上げ!AIによる顧客セグメント・ペルソナ分析術
  • 【第5回】 AIと磨く価値提案:顧客に刺さる『選ばれる理由』の作り方
  • 【第6回】 チャネル設計:AIと見つける最適な顧客接点
  • 【第7回】 顧客との関係構築:AIで実現するLTV最大化
  • 【第8回】 収益モデル設計:AIと探る多様なマネタイズ戦略
  • 【第9回】 キーリソース特定:AIが照らす競争力の源泉
  • 【第10回】 キーアクティビティ特定:AIと最適化する価値創造プロセス
  • 【第11回】 キーパートナー探索:AIと見つける戦略的連携
  • 【第12回】 コスト構造分析:AIと設計する利益創出の土台
  • 【最終回(仮)】 生成AI時代の事業構想:未来図を描き、実行へ繋げる

各回で具体的なプロンプト例やツールの連携方法もご紹介しますので、どうぞお楽しみに!

Empowering Your Vision, Building the Future.