前回は、AIエージェント導入で多くの企業が"がっかり"する理由を、エージェント・ウォッシングとワークスロップという警告から読み解きました。では、うまくいっている企業は何が違うのか。今回向き合いたいのはこの問いです。海外レポートに共通して出てくる答えは、意外にもシンプルでした。「技術ではなく、人」です。

海外の一次情報を読み解く

BCGが2026年に発表した一連のレポート(「Agentic AI Strategy for CIOs and CTOs in 2026」および2026年6月公表の「Executive Perspectives」など)は、AI変革の成果を生み出す要素を「10-20-70フレームワーク」として整理しています。アルゴリズム(AIモデルそのもの)が生み出す価値は全体の10%、技術基盤(システム・データ連携)が20%、そして残りの70%は人と業務プロセスの変革から生まれる、という配分です。

この70%の中身についてBCGは、経営トップの戦略的な関与、業務プロセスの再設計、チェンジマネジメント、人材育成・リスキリングなど、複数の要素を重要な柱として挙げています。実際に、従業員の半数以上に教育・研修を行っている企業ほど導入が先行しており、先進企業は各業務機能でコストを15〜20%削減できているというデータも示されています。技術を入れるだけでは、この差は生まれません。

McKinseyも同様の指摘をしています。「Redesigning technology workforce for the agentic AI era」では、AIエージェントの本格活用に向けて技術部門の人材構成そのものを見直す必要があると述べ、「Recalibrating CIO technology budgets for the AI era」では、AI技術そのものへの投資額よりも、データ整備・業務プロセス再設計・変革管理・ガバナンスといった"組織側の変化"にかかるコストの方が大きくなりやすいと指摘しています。つまり、予算配分の段階から「技術費」より「変革費」の方が大きくなる前提で計画すべきだ、というのが最新の示唆です。

BCGの「10-20-70フレームワーク」― AI変革の成果を生む要素の内訳 AI変革の成果のうち、アルゴリズムが占める割合は10%、技術基盤が20%、人と業務プロセスの変革が70%を占める。技術投資だけでは成果は限定的であることを示す図。 10% 20% 70% アルゴリズム 技術基盤 人・業務プロセスの変革 (戦略的関与・プロセス改革・人材育成など) 出典:BCG「10-20-70フレームワーク」(2026年公表の複数レポートより作成) 従業員の半数以上に教育を行う企業ほど導入が先行し、先進企業は各機能でコストを15〜20%削減
図:BCG「10-20-70フレームワーク」。AI変革の成果の7割は、技術ではなく人と業務プロセスの変革から生まれる。
AI変革の成果のうち、アルゴリズムが生む価値はわずか10%。残りの90%は技術基盤と、人・業務プロセスの変革から生まれるとBCGは分析しています。

立ち止まって考える:日本の中小企業にどう関係するか

このデータを見て最初に思うのは、「70%を人に割く」と言われても、専任のAI推進部門も情報システム担当も人手を割けないことが多い中小企業にはどうすればいいのか、という疑問です。BCGやMcKinseyのレポートは、変革管理チームや教育プログラムを整備できる規模の企業を前提にしています。同じやり方をそのまま真似ることはできません。

そもそも、なぜ技術ではなく人が7割を占めるのか。私は、AIエージェントが従来のシステムと根本的に性質の違う道具だからだと考えています。従来のシステムは「正しい手順」をシステム側に作り込む道具でした。使う人は決められた画面で決められたボタンを押せばよく、誰が操作しても同じ結果になるように作ること自体が、設計の目的だったとも言えます。AIエージェントは逆です。「何を・どういう条件で・どこまで」任せるかを、使う側がその都度言葉にしないと動きません。道具というより「部下に仕事を任せる」に近く、同じツールを入れても、うまい人は成果を何倍にもし、雑な任せ方はワークスロップを量産する。AIは使う人の能力の"増幅器"なのです。技術が同じでも成果が分かれる理由——70%が人の側にある理由は、ここにあります。

ただし、この「7割は人」という原則自体は、規模が小さいほど軽視できないと私は考えています。大企業であれば専門部署の失敗が全社を止めることはありませんが、中小企業では「導入を任された1人」の頑張りと理解度が、そのままAI活用の成否に直結します。だからこそ、中小企業が取るべき打ち手は、BCGの言う「教育プログラム」を縮小コピーすることではなく、もっと身近な単位に置き換えることです。

具体的には、全員に一斉に使わせようとしないことです。まず各部署に1名——会社の規模によっては社内にまず1人で構いません——"AIエバンジェリスト"(社内にAIの使い方を広める伝道役)を選び、その人が業務時間の中でAIを触って実験できる環境を用意します。会社としての教育投資も、全社員向けの研修を薄く広くやるのではなく、まずこの人たちに集中させます。そして各職場で試した結果——うまくいったこと、いかなかったこと——を定期的に共有し合い、そこで得た知見を少しずつ現場に広げていく。最初から全員を変えようとせず、実験→共有→普及の順に進める形です。この進め方は海外でも「チャンピオン方式」として定着しつつあり、Microsoftも公式のCopilot導入プレイブックで、各チームから"チャンピオン"を選び、実際の業務での使い方を実演して同僚に広めるやり方を導入手順の柱に据えています。

AIエージェント自体の育て方も同じです。導入していきなり任せきるのではなく、新しく入った人を迎えるときの"オンボーディング"のように、最初の期間はエバンジェリストがアウトプットや振る舞いを見ながら、任せ方の条件を調整していきます。そして、この調整の過程で固まったルール——どんな条件で、どこまで任せ、どこを人が確認するか——は、そのまま会社の業務ルールとして文書化できます。エバンジェリスト個人の経験だったものが、テンプレートや共通ルールという組織の資産に変わる。ここまでつながって、BCGの言う"70%への投資"の中小企業版になります。

今の自分の仮説・気づき

今回のレポートを読んで、今の時点での仮説は、「中小企業にとっての"変革管理"とは、大がかりな研修制度ではなく、まず"実験する1人"を決めて集中的に投資し、そこで得た知見を組織のルールに変えていくことではないか」ということです。BCGのいう70%は、大企業では専門部署の仕事ですが、中小企業では経営者自身、あるいは経営者が信頼するエバンジェリスト役の社員が担うことになる。この置き換えができるかどうかが、技術投資を無駄にしないための分かれ目だと今は考えています。

読者への問いかけ

自社でAIツールにかけている予算のうち、ライセンス費用や導入費用と、実際にそれを使いこなすための時間・確認・見直しにかけている時間を比べてみてください。もし後者がほとんどゼロなら、それがBCGの言う"70%"が抜け落ちているサインかもしれません。まずは、社内で1人、"AIを実験する役"を決めて、その人が試せる時間と環境を用意するところから始めてみませんか。自社の状況を一緒に整理したい場合は、無料相談も承っています。

※本記事は海外の公開レポートを著者が読み解き、日本の中小企業向けに翻訳・考察したものです。
※本記事はAIを活用して作成しています。