ブランドの中身は、Purpose・Mission・Vision・Values・Brand Promise・理想の顧客像の6要素で整理でき、AIとの対話で言葉にできます。頭の中にあるのに書けない"最難関"を、原体験・こだわり・嫌いなことからAIで言語化する手順を、コピペで使えるプロンプト例つきでお伝えします。
皆さんこんにちは!AIコンサルタント(中小企業診断士)の津田です。
前回(第1回)、「見た目より先に、ブランドの中身を定義する」ことの大切さをお伝えしました。とはいえ、いざ「自社の価値観を言葉にしてください」と言われても、何から書けばいいのか分からず手が止まる方がほとんどです。頭の中にはあるのに、うまく言葉にできない──今回は、この"最難関"をAIと一緒に乗り越える方法を、具体的なプロンプト例つきでお伝えします。
なぜ「言葉にする」のが一番難しいのか
事業への想いやこだわりは、頭の中にはっきりとあるのに、いざ文章にしようとすると驚くほど筆が進まない──これは珍しいことではありません。想いは「暗黙知」という形で頭の中にあり、言葉という「形式知」に変換する作業そのものに技術が要るからです。一人で白紙のノートに向き合っても、堂々巡りになりやすいのはこのためです。ここでAIを"壁打ち相手"として使うと、この変換作業がぐっと楽になります。
ブランドの中身=6つの要素
ブランドの中身を整理するとき、パーパス・ミッション・ビジョンなど似た言葉が多くて混乱しがちです。ここでは、次の6つに一本化して整理します。
| 要素 | 意味 | 一言でいうと |
|---|---|---|
| Purpose(存在意義) | なぜこの事業をやるのか | Why |
| Mission(使命) | 何をするのか | What |
| Vision(目指す姿) | いつまでにどんな状態を目指すか | When |
| Values(価値観) | どのような姿勢で行動するか | How |
| Brand Promise(約束) | お客様に何を約束するか | 顧客への誓い |
| 理想の顧客像 | 自社の価値で喜ぶお客様の姿 | 誰に届けるか |
全部を一度に完璧に埋める必要はありません。まずは6つの箱があることを知っておくだけで、次の作業がぐっとやりやすくなります。パーパス・ミッション・ビジョン・バリューという横文字の違いに迷ったら、リンオペの整理のように、パーパス=Why、ミッション=What、ビジョン=When、バリュー=Howと捉えると分かりやすくなります。
自分の中から引き出す3つの問い
言葉にする作業は、いきなり「ミッションを書いてください」と言われても進みません。まずは次の3つの問いに、思いつくまま答えてみてください。
- 原体験:なぜこの事業を始めよう(続けよう)と思ったのか。きっかけになった出来事は?
- こだわり:仕事のやり方の中で、誰に何と言われても譲れないことは?
- 嫌いなこと:自分がやりたくない仕事のやり方、なりたくない会社の姿は?
とくに「嫌いなこと」は見落とされがちですが、実はブランドの輪郭をはっきりさせる近道です。「こうはなりたくない」を裏返すと、価値観が言葉になりやすいからです。
言語化のコツは、いきなり答えを書こうとしないこと。原体験・こだわり・嫌いなことという素材をメモしてからAIに渡すと、暗黙知が形式知に変わりやすくなります。とくに「嫌いなこと」の裏返しが、価値観の言葉になります。
引き出した素材をAIで言葉に変換する
3つの問いへの答えをメモしたら、それをそのままAIに渡して整理してもらいます。プロンプト例は次の通りです。
「私は以下のような原体験・こだわり・嫌いなことを持っています。これをもとに、Purpose(存在意義)・Mission(使命)・Vision(目指す姿)・Values(価値観)を、それぞれ1〜2文で言語化してください。
原体験:(ここに書いた内容を貼り付け)
こだわり:(ここに書いた内容を貼り付け)
嫌いなこと:(ここに書いた内容を貼り付け)」
出てきた案がしっくりこなくても構いません。「もっと平易な言葉で」「もう少し熱量を込めて」と伝えながら、何度かやり取りするうちに、自分の言葉に近づいていきます。
「理想の顧客像」をAIで具体化する
中身が言葉になったら、次は「誰に届けるか」を具体化します。こちらもプロンプトの力を借りると進めやすくなります。
「私の事業のPurpose・Mission・Valuesは以下の通りです。この価値観に共感し、喜んで対価を払ってくれそうな理想の顧客像を、年代・悩み・普段の行動・この事業に出会うまでの経緯を含めて、具体的な人物像として描いてください。
Purpose:(4で言語化した内容)
Mission:(同上)
Values:(同上)」
出てきた人物像は、あくまで「たたき台」です。実際にお客様と接する中で、少しずつ実態に近づけていけば十分です。最初から完璧な人物像を作る必要はありません。この「声から逆算してターゲットを決める」考え方は、お客様の声からペルソナを決める記事でも詳しく扱っています。
アウトプットの完成形イメージ
ここまでの作業を終えると、次のような形で自社のブランドの中身がひとまとまりになります。
- Purpose:なぜやるか(1〜2文)
- Mission:何をするか(1〜2文)
- Vision:目指す姿(1〜2文)
- Values:行動指針(3〜5個の言葉)
- Brand Promise:お客様への約束(1文)
- 理想の顧客像:人物像(3〜5行程度)
これが完成すれば、次回扱う「見た目(色・トーン・タグライン)」の設計に進む土台が整います。もっと体系立てて事業構想から整理したい方は、生成AIで事業構想を考えるプロンプトの記事や、Claudeで個人事業の頭の整理をする記事もあわせてどうぞ。
一人で黙々と埋めるのが心細い、あるいは6つの要素の一貫性に自信が持てないという方は、事業構想を体系立てて整理できるMiraizConceptの無料トライアルもご活用いただけます。AIとの対話を通じて、今回の作業をより体系的に進めることができます。
次回(第3回:言葉を"見た目"に変える)は、ここで言語化した中身を、色・トーン・タグラインといった「見た目」に翻訳する設計工程に進みます。
よくある質問
Q. パーパス・ミッション・ビジョン・バリューの違いが分かりません。
似た言葉ですが、Purpose=Why(なぜ存在するか)、Mission=What(何をするか)、Vision=When(いつまでにどんな状態を目指すか)、Values=How(どう行動するか)と捉えると整理しやすくなります。本記事ではこれにBrand Promise(顧客への約束)と理想の顧客像を加えた6要素に一本化して考えます。横文字の違いに迷う必要はありません。
Q. 想いはあるのに言葉にできません。どう進めればいいですか?
いきなり「ミッションを書く」のではなく、まず3つの問い(原体験・こだわり・嫌いなこと)に思いつくまま答えてメモしてください。とくに「嫌いなこと(こうはなりたくない)」を裏返すと価値観が言葉になりやすいです。そのメモをそのままAIに渡し、Purpose・Mission・Vision・Valuesとして1〜2文に整理してもらうと、変換作業がぐっと楽になります。
Q. 理想の顧客像は最初から完璧に作る必要がありますか?
いいえ、あくまで「たたき台」で十分です。言語化したPurpose・Mission・Valuesをもとに、年代・悩み・普段の行動などを含めてAIに人物像を描かせ、実際にお客様と接する中で少しずつ実態に近づけていけば問題ありません。最初から完璧な人物像を作ろうとして手が止まるより、仮でも一度形にすることが大切です。