Claudeへの指示は、新入社員に説明するつもりで書くと精度が上がります。Anthropic公式が「Be clear and direct(明確に、直接的に伝える)」と呼ぶこの基本原則を、実際の業務場面で解説していきます。

皆さんこんにちは!AIコンサルタント(中小企業診断士)の津田です。

今回は、Claude活用テクニック大全シリーズ第1回として、公式ドキュメントの「General principles」で最初に挙げられている基本原則「明確に、直接的に伝える(Be clear and direct)」を、実際の業務場面をもとに解説します。

こんな場面はありませんか

BtoB商社で営業を統括するケンジさんは、毎週の営業会議(1時間・参加者5名)の録音データをClaudeに渡し、議事録の要約を頼んでいます。ところが返ってくる要約は、参加者の雑談まで律儀に拾う一方で、肝心の「今週決まった値引き幅」や「次回までの宿題」が抜けることが多くあります。3回に1回はこの調子で、結局は自分で録音を聞き直すはめになり、担当者への確認も別途必要になります。しかもこの手戻りは、忙しい週ほど起きやすいものです。渡している指示は毎回「議事録をまとめてください」の一文だけ。原因はClaudeの性能ではなく、その一文の書き方にあります。

このテクニックは何か(公式解説)

Anthropic公式のClaude Platform Docs「Prompting best practices」の「General principles(基本原則)」に、最初に置かれているのが「Be clear and direct(明確に、直接的に伝える)」という原則です(出典:https://platform.claude.com/docs/en/build-with-claude/prompt-engineering/claude-prompting-best-practices )。公式は次のように説明しています。

「Claude responds well to clear, explicit instructions.」(Claudeは、明確で明示的な指示に対してよく応える)

あいまいな言い方を減らし、何をしてほしいかをはっきり書くほど、Claudeは意図どおりに動く、という意味です。公式はこう続けます。

「Think of Claude as a brilliant but new employee who lacks context on your norms and workflows.」(Claudeを、優秀だが自社のルールや仕事の進め方をまだ知らない新入社員だと思ってほしい)

「優秀」「新入社員」を日常語にすると、地頭は良いものの自社の商習慣や、議事録に何を残すべきかという暗黙のルールを知らない人、ということになります。「議事録をまとめて」だけでは基準がなく、発言を均等に拾ってしまいます。

公式が示す目安が「黄金律(Golden rule)」です。

「Show your prompt to a colleague with minimal context on the task and ask them to follow it. If they'd be confused, Claude will be too.」(その仕事についてほとんど知らない同僚に、あなたの指示文を見せてその通りに動いてもらう。もし同僚が「これでは何をすればいいか分からない」となるなら、Claudeも同じように迷う)

書いた指示文は、他の人が読んで実行できるかで見直してみると、抜けている情報が見えてきます。

具体策は2つあります。①出力の形式・制約を書く。②手順の順序や網羅性が重要なら、番号付きリストや箇条書きで渡す。この原則に向き不向きの区別はなく、あらゆる依頼に共通する土台の原則です。隣接する「理由を添える(Add context)」が指示に"なぜ"を足す技法であるのに対し、この原則はまず"何を・どう"を明確にする段階にあたります。特別な機能やボタンではなく、チャット画面にそのまま入力する指示文の書き方そのものであり、Claude.ai(チャット版)・Cowork・Claude Code(資料整理や業務をまとめて任せられる利用形態)のどれでも同じように効きます。

あいまいな指示と明確な指示で、Claudeの出力がどう変わるか 「議事録をまとめて」という一文だけの指示では出力に抜け漏れが生じる一方、含める項目・除外する情報・出力の見出し構成を指定した明確な指示では、決定事項・宿題と担当者・保留事項に整理されて抜け漏れなく拾える。 あいまいな指示 明確な指示 「議事録をまとめて」 (一文だけ) 含める項目・除外する情報・ 出力の見出し構成を指定 出力(雑然・抜け漏れあり) 値引き幅・宿題が 雑談に埋もれて見えない ① 決定事項 ② 宿題と担当者 ③ 保留・要検討事項 見出しごとに整理され 抜け漏れなく拾える
図:あいまいな指示は出力に抜け漏れが生じやすいですが、含める項目・除外する情報・出力の見出し構成を明確に指定すると、抜け漏れなく整理された出力が得られます。

このテクニックは何を解決するのか

ケンジさんの議事録が毎回ブレるのは、Claudeが「何を重要な情報とみなすか」の基準を渡されていないからです。「要約して」だけでは、参加者の発言をほぼ均等に扱ってしまい、雑談も決定事項も同じ重みで拾われてしまいます。使わなければ、この基準のズレは依頼のたびに起き、結果を毎回チェックし直す手間が減りません。

明確に伝える原則を使うと、「決定事項」「宿題と担当者」「保留事項」を出力に必ず含める項目として指定できるので、Claudeが拾うべき情報とそうでない情報の境界がはっきりします。効くのは、依頼のたびに結果がブレる、担当者で求める粒度が違うなど「何を残すか」の基準があいまいな業務全般です。逆に、基準が誰の目にも明らかな単純作業(定型文の敬語チェックなど)では効果は小さくなります。

実務でこう使う

【準備】最初に一度だけ:議事録を渡すときに使うプロンプトのひな形を、メモ帳などでテキストファイルに保存しておきましょう(Cowork/Claude Codeを使っているなら、拡張子.mdのCLAUDE.mdという指示書ファイルに書いておけば、Claudeが毎回自動で読み込むため貼り付ける手間も省けます)。ひな形には「必ず含める項目」「除外する情報」「出力の見出し構成」を書いておきましょう。

【依頼】毎回:録音データや文字起こしを渡すときは、このひな形をコピーして使います。

この営業会議の議事録から、以下の項目を漏れなく抜き出して要約してください。
・今回決定した事項(値引き・条件変更など数字を含むもの)
・次回までの宿題と担当者名
・保留・要検討事項
雑談や進行上のやり取りは含めないでください。
出力は上記3つの見出しごとの箇条書きでお願いします。

今日から試せること

次にClaudeへ何かを頼むとき、送信前に一度読み返して、「この文だけで新人が同じ結果を出せるか」を自問してみてください。出力の項目や形式を一つ書き足すだけで、的中率は大きく変わります。

Claudeを触ったばかりの方は、基礎から解説した「Claudeとは何か?ChatGPTとの違いと、経営者から選ばれる5つの理由」を先に読むと理解が早くなります。AI活用を何から始めればいいか迷っている方は「AIって何から始めたらいいか分からない」人が最初にやるべき3つのこともあわせてどうぞ。実際に試す場所は、ブラウザのClaude.aiのほか、資料整理や日々の業務をまとめて任せられるCoworkでも同じように使えます。

※本記事はAnthropic公式ドキュメントを著者が読み解き、中小企業向けに翻訳・考察したものです。