皆さんこんにちは!事業構想×生成AI活用アドバイザー(中小企業診断士)の津田です。Google GeminiのGem機能を使うと、特定の役割を持つカスタムAIアシスタントを誰でも簡単に作ることができます。今回は、営業部門の業務効率化を目的に「業務棚卸し担当」というGemを実際に作成しました。Gemの設定方法・ツールの意味・共有機能まで、使い方を丁寧に解説します。

GemとはGeminiの「専用AIアシスタント」機能

Gem(ジェム)とは、Google Geminiに搭載されているカスタムAIアシスタント機能です。通常のGeminiはどんな話題にも対応する汎用AIですが、Gemを使うと特定の役割・知識・口調を持った専用アシスタントを事前に設定しておくことができます。

たとえば「営業部門の業務棚卸しをヒアリングしてMarkdown表にまとめる担当者」「社内マニュアルを参照して問い合わせに答えるサポート担当」「週次報告書のドラフトを作成する秘書」など、業務に特化したAIをチームで共有することが可能です。

ポイント:Gemは「プロンプトのテンプレートを保存する機能」ではなく、「役割・知識・ツール・行動指針を設定した専用AIをまるごと作る機能」です。一度設定すれば、メンバー全員が同じ品質で利用できます。

ChatGPTで言えば「カスタムGPT(GPTs)」に相当する機能です。Google Workspaceを利用している組織では、特にGoogleドライブとの連携が強力なため、社内ドキュメントを参照させる用途でとても有効です。

Gemの設定方法:4つの入力項目を押さえる

Gemを作成するには、Gemini画面の左側メニューから「Gemを探す」→「新しいGemを作成」を選択します。設定画面では主に以下の4項目を入力します。

設定項目 内容 記入例
名前 Gemの表示名。用途がわかる名前をつける 業務棚卸し担当
説明 Gemの役割・概要を1〜2文で記述 業務の棚卸しを行う
カスタム指示 AIの役割・行動ルール・アウトプット形式を詳細に記述(最重要) 後述のプロンプト参照
知識 Gemが参照するファイル(PDF・Googleドキュメント等)を追加 社内業務フロー図、FAQ集など

なかでもカスタム指示(システムプロンプト)が最も重要です。ここに「役割と目標」「行動ルール」「アウトプット形式」「トーンとマナー」を明確に書くことで、Gemの品質が大きく変わります。単に「業務棚卸しをしてください」と書くだけでは不十分で、ヒアリングの進め方や表の形式まで細かく指定するのがポイントです。

Gemで使える「ツール」の種類と具体的な活用事例

Gemの設定画面には「デフォルトツール」という項目があります。ここで有効にしたツールをGemが自律的に使えるようになります。主なツールは以下の3種類です。それぞれ「どんなGemに向くか」の具体的なイメージとセットで理解すると、自社での活用アイデアが広がります。

① Google検索:最新情報を自動取得して回答に反映する

このツールを有効にすると、Gemはユーザーとの対話中にWeb検索を自律的に実行し、最新情報を回答に織り交ぜることができます。AIが学習した知識には「情報の鮮度」に限界がありますが、Google検索ツールがあればリアルタイムの情報を補完できます。

このツールが活きるGemの例:

注意点:Google検索ツールを有効にすると、Gemが検索を挟むぶん回答に時間がかかることがあります。「最新情報が絶対に必要な用途」に絞って使うのが実用的です。社内情報の整理や対話ベースの作業では、検索なしの方がテンポよく進みます。

② Googleドライブの参照:社内ナレッジをGemに「読ませる」

このツールを有効にすると、GemがGoogleドライブ内のドキュメント・スプレッドシート・スライド・PDFを直接読み込み、その内容をもとに回答できるようになります。「社内の情報を知っているAI担当者」を作れるのが最大の強みです。

このツールが活きるGemの例:

③ コード実行:データ加工・計算をGem内で完結させる

このツールを有効にすると、GemがPythonコードを内部で実行し、計算・集計・データ変換・グラフ作成などを行えるようになります。「Excelやスプレッドシートをアップロードして処理させたい」という用途に特に向いています。

このツールが活きるGemの例:

ツール選択の判断基準:目的で組み合わせを変える

やりたいこと 推奨ツール Gemの例
最新の外部情報を活用したい Google検索 競合リサーチ担当、補助金情報担当
社内のファイルや規定を参照させたい Googleドライブ参照 社内FAQ担当、提案書作成担当
数値・データの計算・加工をしたい コード実行 売上集計担当、KPIレポート担当
対話・ヒアリング・文章生成が中心 ツールなし(なし) 業務棚卸し担当、週報ドラフト担当
社内文書を読んで最新情報も加えたい 両方(ドライブ+検索) 提案強化担当、競合比較担当
ツール選択の鉄則:ツールは多ければ良いわけではありません。目的に不要なツールを有効にすると、Gemが余計な処理を挟んでテンポが悪くなることがあります。「このGemは何をするためのものか」を一言で言えるほど絞り込んでから、必要なツールだけを選ぶのが品質を高めるコツです。

Gemの共有機能で「部門のAI担当者」を作る

作成したGemは自分だけでなく、チームや組織内に共有できます。Gemの保存後に表示される「共有」ボタンから、Googleアカウントのメールアドレスを指定するか、リンクで共有することが可能です。

共有を活用することで、以下のようなメリットが生まれます。

Google Workspaceのビジネスプランを利用している場合は、組織内での共有設定がさらに柔軟に行えます。「部署専用のAIアシスタント」を作ってチームに配布する、という使い方が現実的になってきています。

実例:営業部門の「業務棚卸し担当」Gemを作ってみた

今回私が作成したのは、営業部門の業務効率化を目的とした「業務棚卸し担当」Gemです。このGemは、メンバーとの対話を通じて業務内容をヒアリングし、最終的にMarkdown形式の「業務棚卸し表」を作成します。

カスタム指示の設計方針

このGemのカスタム指示は、主に3つのブロックで構成しています。

  1. 役割と目標 — Gemが何のために存在するかを明示。「業務の棚卸し表を作成すること」「効率化の糸口を見つける支援をすること」を明記
  2. 行動指針とルール — ヒアリングの進め方(導入→深掘り→配慮)と、アウトプットの形式(8項目のMarkdown表)を細かく指定
  3. トーンとマナー — 「親しみやすく、かつ信頼感のあるプロフェッショナルな口調」「一度に多くの質問をしない」などコミュニケーション上の配慮を指定

アウトプットのMarkdown表イメージ

Gemがヒアリングを終えると、以下の8項目を含むMarkdown形式の表を自動的に生成します。この表をそのままNotionやGoogleドキュメントに貼り付けて活用できます。

業務カテゴリ タスク名 発生頻度 所要時間 難易度 重要度 課題・ボトルネック 改善の方向性
顧客対応 見積書作成 週3回 30分/件 フォーマットが統一されておらず担当者依存 テンプレート化・自動化
営業報告 週次報告書作成 週1回 1時間 記入項目が多く時間がかかる AI下書き生成に切り替え

実際に使ってみると、Gemが「まずは大きな業務カテゴリを3〜5つ挙げてください」と問いかけてくれるところから対話が始まり、一問一答形式で無理なく情報を引き出してくれます。従来のExcelシートに自分で記入する方式に比べ、ヒアリング的な対話で進めることで、普段意識していなかった「名もなき業務」も自然に出てきやすくなるのが大きなメリットです。

営業担当者にとっては「棚卸しシートを自分で埋める作業」が「AIとの会話」に変わるため、心理的ハードルも下がります。業務改善のファーストステップとして、ぜひ試してみてください。なお、業務の洗い出し後に見える化から始める生産性向上の手法を組み合わせると、改善の優先順位がさらに明確になります。

よくある質問

Q. GemはGeminiの無料プランでも使えますか?

Gemの作成・利用はGeminiの無料プランでも可能です。ただし、作成できるGemの数やGoogleドライブ参照などの高度な機能はGoogle Oneの有料プランで拡張されます。まずは無料版で試してみることをおすすめします。

Q. カスタム指示はどのくらい詳しく書けばいいですか?

目安として、役割・行動ルール・アウトプット形式・トーンの4ブロックを含む300〜800文字程度が実用的です。短すぎると汎用的な回答になり、長すぎると指示が矛盾したり無視される場合があります。今回の「業務棚卸し担当」のように、具体的な項目名や手順を書くほど精度が上がります。

Q. Gemはスマートフォンからも使えますか?

はい、GeminiアプリはiOS・Androidに対応しており、スマートフォンからGemを呼び出して利用できます。移動中や外出先での簡単なヒアリングにも活用できます。

Q. ChatGPTのカスタムGPTとどう違いますか?

主な違いは「エコシステムとの統合性」です。GemはGoogleドライブ・Googleカレンダー・GmailなどのGoogleサービスとネイティブに連携できる点が強みです。一方、カスタムGPTはOpenAIのAPIやプラグインと統合しやすい点が特徴です。Google Workspaceを業務で使っている組織には、Gemが馴染みやすい選択肢になるでしょう。