Claudeへの指示に「なぜそうしてほしいか」という理由を一文添えるだけで、精度が上がります。Anthropic公式が「Add context to improve performance(理由を添えて精度を上げる)」と呼ぶこの原則を、実際の業務場面で解説していきます。

皆さんこんにちは!AIコンサルタント(中小企業診断士)の津田です。

今回は、Claude活用テクニック大全シリーズ第2回として、前回の「明確に伝える」に続く基本原則「理由を添えて精度を上げる(Add context to improve performance)」を、実際の業務場面をもとに解説します。

こんな場面はありませんか

BtoB商社で調達を担当するケンジさんは、月に10件ほど作成する見積書に添える提案文(250字程度)の下書きをClaudeに任せています。「箇条書きにしないで、地の文でお願いします」と毎回頼んでいるのに、3回に1回は箇条書きに戻ったり、急に砕けた言い回しが混ざったりします。見積書のPDFテンプレートにそのまま貼り付ける前提のため、体裁が乱れるたびに手直しが発生し、月10件のうち3件は結局書き直しています。指示の言葉自体は毎回ほぼ同じなのに、なぜ結果だけがぶれるのでしょうか。

このテクニックは何か(公式解説)

Anthropic公式のClaude Platform Docs「Prompting best practices」の「General principles」には、前回取り上げた「Be clear and direct(明確に、直接的に伝える)」のすぐ次に「Add context to improve performance(理由を添えて精度を上げる)」という原則が置かれています(出典:https://platform.claude.com/docs/en/build-with-claude/prompt-engineering/claude-prompting-best-practices )。公式は次のように説明します。

「Providing context or motivation behind your instructions, such as explaining to Claude why such behavior is important, can help Claude better understand your goals and deliver more targeted responses.」(指示の背景や動機、つまりなぜその振る舞いが重要なのかをClaudeに説明することは、Claudeがあなたの目的をより深く理解し、狙いどおりの回答を返す助けになる)

「背景や動機(context or motivation)」を日常語にすると「なぜそうしてほしいか」という理由のこと、「targeted responses(狙いどおりの回答)」とは似た場面でも狙いを外さない回答のことです。公式はさらにこう続けます。

「Claude is smart enough to generalize from the explanation.」(Claudeは、その説明から自分で汎用化できるだけの理解力がある)

「汎用化する(generalize)」とは、教えた理由を一つの場面だけでなく、似た別の場面にも自分で当てはめて判断を広げる、ということです。前回の「明確に伝える」が"何を・どう"してほしいかをはっきり書く技術だったのに対し、この原則は"なぜ"を一言添える技術にあたります。「箇条書きにしないで」だけでは、Claudeはその一文が指す今回の依頼にしか従いません。しかし「この文面は見積書のPDFテンプレートに手直しなしで貼り付けるため、体裁の乱れが取引先への印象を損なう」という理由まで伝えると、Claudeは"体裁を崩してはいけない場面"だと理解し、明示していない類似の崩れ(砕けた言い回し・絵文字・記号の乱用)まで自分で避けるようになります。特別な機能やモードの切り替えではなく指示文に一文を足すだけの工夫で、Claude.ai(チャット版)・Cowork・Claude Codeのどれでも同じように効きます。

指示だけの場合と、理由を添えた場合で、Claudeが自分で判断を広げる範囲の違い 理由を添えない指示ではClaudeが守る範囲は今回の依頼のみにとどまるが、なぜそうしてほしいかという理由を添えると、砕けた言い回しや絵文字・記号の乱用など明示していない崩れ方までClaudeが自分で回避するようになる。 指示だけ 指示+理由 「箇条書きにしないで」 (理由なし) 「PDFに貼るため体裁を 崩せない」と理由を追加 Claudeが守る範囲 今回の依頼 のみ 砕けた言い回しや絵文字は 別の指示がないと防げない Claudeが守る範囲 今回の 依頼 砕けた言い回し・絵文字・ 記号の乱用も自分で回避
図:理由を添えない指示ではClaudeが守る範囲は今回の依頼のみにとどまりますが、なぜそうしてほしいかを添えると、明示していない類似の崩れ方までClaudeが自分で回避するようになります。

このテクニックは何を解決するのか

ケンジさんの提案文が3回に1回崩れるのは、「箇条書きにしないで」という指示がその場限りのルールとしてしか伝わらず、Claudeが"なぜダメなのか"を推測で補っているからです。理由を添えなければ、依頼のたびに似た崩れ方を都度指摘し直す必要があり、月10件のうち数件は手直しが残ってしまいます。

理由を添えると、Claudeはその理由が当てはまる範囲まで自分で判断を広げるため、明示していない崩れ方も含めて防いでくれるようになります。効くのは、体裁や言葉遣いのルールが細かく想定外の崩れが起きやすい文書(取引先向けの正式な文章、社内規定に沿った文面など)です。逆に、一度きりの単純な指示や崩れても実害のない下書き段階のメモでは、理由を添える手間に見合う効果は薄くなります。

実務でこう使う

【準備】最初に一度だけ:見積書の提案文のように繰り返し使う文面には、CLAUDE.md(Cowork/Claude Codeで自動的に読み込まれる指示書ファイル、拡張子.md)に「なぜその体裁にしたいか」を書いておきましょう。チャット版だけで使う場合は、同じ理由の一文をプロンプトの冒頭に固定文として用意しておくとよいでしょう。

【依頼】毎回:

以下の見積内容をもとに、提案文を250字程度で作成してください。
この文面は見積書のPDFテンプレートに手直しせず貼り付けるため、
箇条書き・絵文字・記号・砕けた言い回しは一切使わず、
取引先の購買担当者が読む正式な文章として、地の文でお願いします。

理由(なぜ体裁を守る必要があるか)を書き添えるだけで、指示していない崩れ方まで防げます。

今日から試せること

次にClaudeへ体裁や言葉遣いのルールを伝えるとき、「〜しないで」で終わらせず、その理由を一文添えてみてください。理由が明確なほど、Claudeは似た場面まで自分で気を配ってくれます。

前回の「明確に伝える」とあわせて読むと、指示文の"何を・どう"と"なぜ"の両方を押さえられます。Claudeを触ったばかりの方は「Claudeとは何か?ChatGPTとの違いと、経営者から選ばれる5つの理由」から、AI活用の始め方に迷っている方は「AIって何から始めたらいいか分からない」人が最初にやるべき3つのこともあわせてどうぞ。

※本記事はAnthropic公式ドキュメントを著者が読み解き、中小企業向けに翻訳・考察したものです。