AIで小規模事業者持続化補助金の事業計画書の下書きを作ることはできます。ただし、「AIに書かせた=完成」ではありません。採択される申請書は、経営者自身の言葉で書かれたものです。AIは「書いてもらうツール」ではなく、「自分の思考を整理するツール」として使うことが正しい使い方です。
皆さんこんにちは!事業構想×生成AI活用アドバイザー(中小企業診断士)の津田です。
持続化補助金の申請を検討しているけれど、事業計画書の書き方がわからない。AIを使えば楽に作れると聞いたが、本当にそうなのか——そういった疑問を持つ方に向けて、現場から見えた実態をお伝えします。
現場から見えた「通る人・通らない人」の差
私はかつて公的機関の職員として、多数の事業計画書を閲覧してきました。フレームワークで整理された計画書も、手書きの簡潔な計画書も数多く見てきました。
そこで気づいたことがあります。経営の知識がある人が書いたような綺麗な文章よりも、経営者自身の言葉で書かれた簡潔な文章のほうが、迫力があります。多数の申請書を読んでいれば、本人が書いたかどうかはだいたいわかります。余計な修飾がなく、自社の事業を本当に理解している言葉は、読む側に伝わるのです。
私が支援する方や、これまで閲覧してきた申請書から見えてきたことがあります。
通りやすい人の特徴
- 自分でビジネスと向き合い、外部環境(市場・競合・顧客)と自社の視点から経営を捉えている
- 事業計画の内容を自分の言葉で語れる
- 結果にコミットしようとしている
厳しい場合が多い人の特徴
- 計画書作りを人任せにしようとする態度
- 経営の視点で自社を捉えていない
- 自社の強みや方向性を自分の言葉で言えない
そもそも申請書は本人が考えて書いたほうがよい理由が2つあります。ひとつは、自分が書いたので内容をよく理解できること。もうひとつは、結果に自分でコミットしようという姿勢が生まれることです。
なお採択されるかどうかはあくまで審査基準に基づきますので、上記の特徴が採択を保証するものではありません。ただ、長年にわたり多数の申請書を読んできた経験から言えることです。
AIで事業計画を作るときのよくある誤解と落とし穴
誤解:「AIを使えば簡単に作れる」
下書きを作ることはできます。しかしその後の磨き上げが大変で、結局ゼロから作るのと時間的にはあまり変わりません。ただし、下書きがあることで思考が深まるというメリットは確かにあります。「何もない状態から考える」より「たたき台に赤を入れる」ほうが、思考は前に進みます。
落とし穴:一般的な表現になりがち
AIに書かせると、どの会社にでも当てはまるような内容になりやすいのです。「弊社の強みは丁寧な対応です」「顧客ニーズに応えます」のような表現では、よく読めば内容がないと審査担当者にはわかってしまいます。AIを使うときは「自社ならではの情報をどれだけ入力できるか」が品質を決めます。
AIを使った事業計画作成の流れ(11ステップ)
以下のステップを順に進めることで、事業計画の骨格を組み立てることができます。各ステップでAIを補助的に使うことで、思考の整理と文章化を効率化できます。
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経営の現状と課題・対策の全体像を描く 昨年よりも売上をもっと伸ばしたいので新たな販路開拓を行いたいなど経営の課題と、そのために何をやって、どのような経費を、いくらくらい、いつ使うのかを先にイメージしておきます。
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公募要領を自分で読んで目的や経費をしっかり理解する(最重要) 補助対象となる経費の種類や申請要件は必ず自分で把握してください。▶ AI活用例:NotebookLMに公募要領を読み込ませて要約・質問することで、理解を格段に早めることができます。
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自社の経営状況を整理する 売上・利益・商品サービス・顧客・原価経費・人・技術など、自社の現状を棚卸しします。▶ AI活用例:Claudeと対話しながら項目を整理していくと、見落としが減ります。
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強み・市場・顧客・競合を考える 自社の強みが市場でどのように活かせるかを整理します。▶ AI活用例:AIに質問を出してもらいながら思考を深めます。DeepResearchで市場や競合のレポートを分析する。
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目標と今後の課題を考える 経営の目標と現状に対する課題が何で、その対策のために補助事業を通じて何を実現したいか、数値目標も含めて整理します。
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補助事業の内容を具体化する いつ・何を・いくらで・どの程度実施するかを明確にします。
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どのような結果・効果を見込むかを考える 補助事業の実施によって、売上・集客・業務効率などにどう影響するかを具体的に示します。
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整理した内容をもとにAIで下書きを作る ここまで整理した情報をAIに渡して、申請書の下書きを生成します。情報の質が文章の質を決めます。
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下書きを自分の言葉で磨き上げる(最も時間がかかる) AIが生成した一般的な表現を、自社の実態に合った具体的な言葉に書き直します。ここが最も重要な工程です。
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第三者に読んでもらい、内容が伝わるか確認する 自社のことを知らない人に読んでもらい、意図が伝わるかを確認します。
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審査の視点でチェックする 公募要領の審査基準に照らし合わせて、抜け漏れがないか最終確認をします。
必ず守ってほしいこと
公募要領は必ず自分でしっかり読んでください。事務局とのやり取りや、補助金が支給されないといったトラブルを防ぐために、最終的な責任は申請者本人にあることを忘れないでください。AIや専門家を使うとしても、人任せにしないことが大切です。
具体的な進め方はご相談ください
各ステップで「どんなプロンプトを使えばいいか」「AIの回答をどう磨き上げるか」「自社の場合はどこから手をつければよいか」といった具体的な疑問は、個別にご相談いただけます。
補助金申請の文脈に限らず、AIを使った業務改善や事業計画策定の支援を行っています。まずはお気軽にご相談ください。
よくある質問
Q. AIで作った事業計画書は審査で不利になりますか?
AIで作ったこと自体が不利になることはありません。問題になるのは、自社の実態や戦略が反映されていない内容です。どんな方法で作っても、経営者自身の言葉と思考が入っていない申請書は審査員に伝わりません。
Q. 持続化補助金はどんな事業者が対象ですか?
小規模事業者が対象です。商業・サービス業は従業員5名以下、製造業・建設業等は20名以下が目安です。詳細は最新の公募要領でご確認ください。
Q. AIを使えば事業計画書は簡単に作れますか?
下書きを作ることはできますが、その後の磨き上げが大変です。結局ゼロから作るのと時間的にはあまり変わりません。ただし、下書きがあることで思考が深まるというメリットはあります。
Q. 事業計画書は自分で書かないといけませんか?
申請書は本人が作成することが前提です。また、自分で書くことで内容の理解が深まり、採択後の実行にも責任を持って取り組めます。AIや専門家はあくまでサポートとして活用してください。