FAX・紙・Excelを「人の手でつなぐ」作業は、AIで大幅に削減できます。FAXの読み取り、Excel間の転記、報告書の作成——この3つが自動化の入り口です。全部を一度に変える必要はなく、一つから始められます。
皆さんこんにちは!AIコンサルタント(中小企業診断士)の津田です。
「今日もFAXの処理から朝が始まった」——紙の注文書がFAXで届く。それをExcelに打ち込む。打ち込んだExcelから別のシートへコピーする。在庫管理のファイルにも同じ数字を入力する。この一連の作業に、毎朝1〜2時間かかっている会社は少なくありません。
支援の現場でわかったことがあります。「忙しくて手が回らない」という経営者に話を聞くと、その多くが「やること自体は正しいのに、やり方が古い」状態にあります。紙・FAX・Excelを使うこと自体が悪いわけではありません。でも、それらを「人の手でつなぐ」ことに時間を使い続けるのは、今や必要ない手間です。
この記事では、紙・FAX・Excel中心の業務をAIで変える3つの入り口を紹介します。全部を一度にやる必要はありません。自社に合う一つから試してみてください。
なお、本記事は「業務プロセスの3課題とAIで変える全体地図(S-07-00)」のサブ記事です。業務プロセス全体の整理は先にそちらをご覧ください。
紙・FAX・Excelの何が問題か
使い続けること自体は問題ではありません。問題は「人がつなぐ手間」です。
- FAXで届いた注文書を、目で見てキーボードで打ち直す
- Excelのシートを別のシートにコピーし、手でつなぎ合わせる
- 紙の作業日報を、翌日に集計して月次の表に転記する
これらは、AIを使えば人が手を動かさなくても処理できます。人手不足が深刻な今、「できる人が転記をやる」時間は、もっと別のことに使えます。受注処理に時間を取られる営業担当者が、もし1日2時間を接客や提案に使えたら。その差は積み重なって、売上と採用の両方に効いてきます。
放置するとどうなるか
手作業の業務を放置すると、2つの問題が加速します。
採用しても人が足りなくなる
手作業の量は人数に比例します。受注が増えれば転記も増え、人を増やせばミスも増える。人が1名辞めると、その分の手作業が残った社員に積み上がる。この構造は、やり方を変えない限り解消されません。
人的ミスが増え続ける
同じ情報を複数の場所に手入力するほど、数字の食い違いが起きます。請求書と受注台帳の数字が合わない、在庫が実態と異なる。これらのミスは、発見と修正にさらに時間がかかります。
独立行政法人中小企業基盤整備機構の調査(2026年3月)によると、AI導入を検討・実施している中小企業では「業務効率化・作業時間の短縮」が導入目的の第1位(87.0%)です。効率化に課題を抱えている経営者は多く、AIでの解決が現実的な選択肢になってきています。
(出典:中小機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」2026年3月 https://www.smrj.go.jp/research_case/questionnaire/fbrion0000002pjw-att/202603_AI_point.pdf)
AIで変える3つの入り口
① FAX・紙の注文書処理を自動化する
AI-OCR(文字認識)ツールを使うと、FAXや紙の帳票を読み取り、データとして取り込みます。これをExcelや受注管理ツールと連携させると、手打ち転記がなくなります。
導入費用の目安は月額1〜2万円程度のクラウドサービスから始められます。1日10枚の注文書を手入力している場合、1枚あたり5分×10枚×20日=月間約100時間分の手入力作業が、大幅に削減できます(※導入効果は自社の業務量・設定によって異なります)。
② Excel間の転記・集計を自動化する
Excelを複数シート間でコピーしている作業は、Excelのマクロ(自動処理機能)やクラウドのワークフローツールで自動化できます。Claudeを使えば、「こんな転記をしているのだが、どう自動化できるか」と相談するだけで、マクロの設計方針を教えてもらえます。ITが苦手でも「聞いて整理する入り口」として使えます。
③ 報告書・帳票の作成を自動化する
日々の作業日報や月次報告書を、毎回ゼロから作っている会社は多いです。入力テンプレートを決め、Claudeに「この数字からレポートを作成して」と指示するだけで、報告書の骨格を数分で作れます。
手動パターンと自動化パターン
AIを使うとき、2つの入り口があります。どちらから始めるかは、自社の体制に合わせて選んでください。
手動パターン(今すぐ始める)
スマートフォンやパソコンでClaudeを開き、「うちはFAXで注文書を受けて手入力しているが、どう自動化できるか教えてほしい」と聞いてみてください。自社の業務の流れを相談しながら、どのツールが合うか、どの手順から始めるかを一緒に整理できます。ツールを導入する前に「設計を相談する」ことから始めるのが、失敗しない入り口です。
自動化パターン(定期処理を自動化)
Claude CoworkまたはCoworkが連携するワークフローツールを使うと、FAX受信→データ取り込み→台帳への登録→報告書送信まで、一連の流れを定期自動実行できます。毎日行う繰り返し作業に向いています。どちらも「全部を一気に変える」必要はありません。まず1つの業務で試して、効果を確認してから広げていく進め方が現実的です。
- [S-07-00] 全体地図——業務プロセスの3つの問題とAIで変える全体地図
- [S-07-01] 効率化——紙・FAX・Excelで回している会社がAIで3業務を自動化する(この記事)
- [S-07-02] 効率化——同じ仕事を何人かがバラバラにやっている。重複をなくす(近日公開)
- [S-07-03] 標準化——「やり方は人によって違う」を卒業する。AIで業務マニュアルを30分でつくる(近日公開)
- [S-07-04] 標準化——「○○さんがいないと分からない」をなくす。業務標準化のAI活用(近日公開)
- [S-07-05] AI入門——「AIって何から始めたらいいか分からない」人が最初にやるべき3つのこと(近日公開)
- [S-07-06] データ活用——データはある。でも使えていない。AIでデータを「意思決定の根拠」に変える(近日公開)
使える補助金
業務のデジタル化には「デジタル化・AI導入補助金」(旧IT導入補助金、2026年度版)が使えます。AI-OCRツールや受注管理システムの導入費用に適用できるケースがあります。補助率は最大3/4です。
最新の申請期限・対象ツールは公式サイト(https://it-shien.smrj.go.jp/)でご確認ください。
※2026年6月時点の情報です。制度の詳細は変更される場合があります。
まず一歩
「全部を変える」必要はありません。自社の「一番時間がかかっている手作業」を1つ選び、まずそこから変えてみてください。
- FAX転記が多い → AI-OCRの導入を検討する
- Excel間のコピーが多い → Claudeに「どう自動化できるか」相談する
- 報告書の作成に時間がかかる → Claudeで雛形から作ってみる
どこから始めればいいか分からない方は、無料相談でお話を聞かせてください。自社の業務に合った一手を、一緒に考えます。
よくある質問
Q. FAX・紙の処理をAIで自動化すると、どのくらい時間が短縮されますか?
業務量や設定によって異なりますが、1日10枚の注文書を手入力している場合、1枚あたり5分×10枚×20日=月間約100時間分の手入力作業が大幅に削減できます。ただし、初期設定や読み取り精度の確認に時間がかかる場合もあります。まず試算してみて、費用対効果が合うかどうかを検討してください。
Q. Excelのマクロを使ったことがない会社でも、自動化できますか?
はい、始められます。Claudeに「こういう転記作業をしているが、どう自動化できるか」と相談することで、どのツールや方法が自社に合うかを整理できます。マクロを自作する必要はなく、クラウドのワークフローツールを使う選択肢もあります。まず相談してみることが最初の一歩です。
Q. AI-OCRを導入する際の注意点はありますか?
手書き文字や低解像度のFAXは読み取り精度が下がる場合があります。導入前に自社のFAX・帳票を試しにかけてみて、精度を確認することをおすすめします。また、導入後も定期的に出力データを確認する運用ルールを設定しておくことが重要です。全自動にしてもチェックは必ず残してください。