「支援したい人がいる」という思いは、まだ事業コンセプトではありません。「誰に・何を・どのように」という3つの問いに答えることで初めて、その思いは「設計図」になります。AIを使えば、この3つを短時間で深掘りできます。
皆さんこんにちは!事業構想×生成AI活用アドバイザー(中小企業診断士)の津田です。
前回の記事では、自分の棚卸しを通じて「私は○○が苦にならなくて、○○を大切にしている。だから○○な人を支援したい」という1文を作りました。今回はその1文を起点に、具体的な事業コンセプトへと育てていきます。
「1文」を「設計図」に育てる
棚卸しで生まれた「支援したい」という1文は、まだ「想い」の段階です。ビジネスとして動かすには、それを「誰に・何を・どのように」という3つの問いに答える形に変換する必要があります。
- 誰に:どんな人が対象か(属性・状況・抱えている課題)
- 何を:どんな価値・成果・変化を届けるか
- どのように:どんな方法・形式・プロセスで提供するか
ポイント:この3つのうち、最も重要なのは「誰に」です。「誰に」が曖昧なままでは、「何を」も「どのように」も定まりません。ターゲットを絞ることを怖がらず、まず「この人のためにやる」という1人を思い浮かべることから始めましょう。
「誰に」を深掘りする――ターゲットを絞るほど届く
「退職後の方を支援したい」「中小企業を助けたい」——こうした表現はまだターゲットとしては広すぎます。「退職後の方」の中にも、60代前半の人と70代近い人では状況が全く違います。「中小企業」の中でも、製造業と飲食業では課題が異なります。
ターゲットを絞ることを「市場を狭める」と感じる方も多いのですが、実際は逆です。絞り込まれたターゲットほど「これは自分のことだ」と感じてもらいやすく、選ばれやすくなります。
プロンプト例①(ターゲットの深掘り)
私が支援したい対象は「○○(例:退職後に起業を考えている方)」です。
この対象をさらに具体化するために、以下を教えてください。
①この対象の中で、特に困っている・急いでいる状況はどんな人ですか?
②この対象が「お金を払ってでも解決したい」と感じる悩みを3つ挙げてください。
③この対象に「私のサービスを使ってほしい」と思ったとき、最もイメージしやすい具体的な1人を描写してください(年齢・職歴・今の状況・悩み)。
③で出てきた「具体的な1人」の描写が、いわゆる「ペルソナ」です。この人物像が鮮明になるほど、次の「何を」が書きやすくなります。AIが出した人物像を「少し違う」と感じるなら、その感覚を大切にして修正を重ねてください。その「違和感」の先に、本当のターゲット像があります。
「何を」を言語化する――提供価値を具体的にする
「何を提供するか」を考えるとき、多くの方が「サービスの内容」を書こうとします。しかし事業コンセプトの段階では、「サービスの内容」より「お客さんに起きる変化」を言語化することが重要です。
「何を」の本質は「Before→After」です。お客さんは今どんな状態で(Before)、あなたのサービスを使った後にどんな状態になるか(After)——この変化こそが、お客さんが「お金を払う理由」になります。
プロンプト例②(提供価値の言語化)
私のターゲット:(プロンプト①で描いたペルソナを貼る)
このターゲットが私のサービスを受けた「前」と「後」を教えてください。
【Before】今どんな状況・悩み・不安を抱えているか
【After】サービスを受けた後にどんな状態になっているか、何ができるようになっているか
また、この「Before→After」を一言で表すとしたら何ですか?
「一言で表す」部分がキャッチコピーや自己紹介の核になります。「モヤモヤを言葉に変える」「やりたいことを事業に変える」——こうした短い言葉が生まれれば、事業コンセプトの「何を」は完成に近づいています。
「どのように」を考える――提供の形を決める
「どのように」は、サービスの形式・手段・プロセスです。コンサルティングなのか、講座なのか、伴走支援なのか、オンラインなのかオフラインなのか——この段階では大まかな方向性を決めれば十分です。
重要なのは、「どのように」はターゲットと提供価値が決まってから考えることです。先に「オンライン講座をやりたい」と形式を決めてしまうと、ターゲットや提供価値がその形式に縛られてしまいます。「誰に・何を」が先、「どのように」はその後です。
3つを1文に統合する――事業コンセプトの完成形
「誰に・何を・どのように」が揃ったら、最後にAIに1文に整理してもらいます。
以下の情報をもとに、私の事業コンセプトを「誰に・何を・どのように提供するか」が分かる1〜2文にまとめてください。シンプルで、誰が聞いても分かる言葉にしてください。
【誰に】(ターゲットの描写)
【何を】(Before→After・提供価値)
【どのように】(サービスの形式・方法)
出来上がった1文が「事業コンセプト」です。この文章は、ホームページのキャッチコピー、名刺の一言、営業時の自己紹介——すべての土台になります。
事業コンセプトは「完成」より「使いながら育てるもの」です。最初から完璧な1文を目指す必要はありません。まずAIと一緒に仮の1文を作り、実際に人に話してみて反応を確かめながら磨いていきましょう。
よくある質問
Q. ターゲットを絞りすぎると、お客さんが少なくなりませんか?
起業初期は「広く薄く」よりも「狭く深く」の方が成功しやすいです。ターゲットを絞ることで口コミが生まれやすくなり、「あの人はこういう人に向いている」という紹介が起きやすくなります。軌道に乗ってから対象を広げることは、いつでもできます。
Q. 「誰に」が2種類あって絞れません。どうすればいいですか?
まず1つに絞って事業コンセプトを完成させることをおすすめします。2つのターゲットで2つのコンセプトを作り、どちらが「より自分らしいか」「より話しやすいか」を比べてみてください。AIに「この2つのターゲット、どちらの方が私の強みと合っていますか?」と問いかけるのも有効です。