バイブコーディング(Vibe Coding)とは、AIに自然言語で指示を出すだけでシステムやアプリを開発する手法のことです。プログラミングの専門知識は不要で、「こんなものを作りたい」という感覚(vibe)をAIに伝えるだけで、ソフトウェアが完成します。私自身、元エンジニアでありながら、ここ数年はコードを一行も書かずにSaaSプロダクトを開発してきました。本記事では、その体験と、バイブコーディングが中小企業の現場をどう変えるかをお伝えします。

私がコードなしでシステムを作り始めた話

2023年11月。ChatGPT 3.5が世に出てきたとき、当時、私は中小企業支援機関の職員として、起業支援をしていました。しかしこれを触った瞬間、私は「これは何か変わる」と直感しました。

システムエンジニアだったときから、ずっと「自分でシステムを作れたらいいのに」という気持ちがくすぶっていました。でも、実際に手を動かす時間もスキルの鮮度も、以前とは違ってありません。 そのもどかしさを抱えたまま、ChatGPTを触り始めました。

最初はそれほど本格的ではありませんでした。アイデアを整理するために使ったり、文章の壁打ちをしたり。でも、徐々に「これで、もしかしてシステムも作れる?」という手応えが生まれてきました。

2年間の試行錯誤を経て、確信へ

2023年3月に海外展開診断アプリをGoogle App Scriptで作りました。これはChatGPTを使って開発しました。 しかし、その後の2年半の間は、経営支援と生成AIの融合に挑戦し、経営支援用にプロンプトを開発し実践で活用するなどプログラミングに使うことはありませんでした。 転機となったのは2025年11月の生成AIハッカソン決勝に出場したときです。 Antigravity、Codex、そしてClaude Code――様々なAI開発ツールを試しながら、様々なアプリを10本ほど開発していきました。まさに自分が欲しいと思ったアプリや自分専用のシステムが簡単に開発できました。この間、コードは一行も書いていません。すべてAIへの指示出しだけです。

2022年11月
ChatGPT 3.5に触れ、「これで何かが変わる」と直感。文章や構想整理でAIを使い始める。
2023年〜
生成AIを使い事業構想を具体化する経営プロンプト作りを開始。業務で実践し経営者を喜ばせてきた。
2025年11月
生成AIハッカソンに参加。チームで短期間のシステム開発を経験し、AI開発の可能性をさらに実感。バイブコーディングツール(Antigravity、Codex、Claude Code)でのアプリ開発に没頭する。
2026年〜
事業構想支援SaaS「MiraizConcept」を開発・提供開始。コンサルタントが自らプロダクトを持つ時代へ。

ハッカソンでは、複数の開発者と肩を並べてシステムを作りました。私のコントリビューションは、AIへの指示出しと、構想の整理。それだけで、エンジニアと同じ土俵に立てるようになっていました。

そして今、私が開発・提供しているMiraizConceptは、経営者が事業構想をAIと対話しながら言語化するためのSaaSです。これもすべて、バイブコーディングによって生まれました。コンサルタントが自らプロダクトを設計し、開発し、世の中に届けられる。そんな時代になったのです。

バイブコーディングとは何か

「バイブコーディング(Vibe Coding)」という言葉は、2025年2月にAIの第一人者であるアンドレイ・カルパシー氏(元Tesla AIディレクター、OpenAI共同創業者)が提唱したものです。

「コードの存在すら忘れて、ただ感覚(vibe)に身を委ねる。AIに意図を伝え、何ができるかを見て、それを形にしていく」
— Andrej Karpathy, 2025年2月

従来のシステム開発では、プログラマーが一行一行コードを記述する必要がありました。JavaやPython、JavaScriptといったプログラミング言語を習得し、何百行、何千行ものコードを管理するのが当たり前でした。

バイブコーディングはその前提を根本から変えます。

このサイクルを繰り返すだけで、システムが完成していきます。英語でも日本語でも、普段使う言葉で指示できます。

POINT

バイブコーディングは「ノーコード」とも違います。ノーコードツールは決まった機能の範囲内で操作するのに対し、バイブコーディングはAIがゼロからコードを書くため、原理上はどんなシステムも作れます。自由度はプロのエンジニアと同等です。

なお、2025年末にはコリンズ英語辞典が「Vibe Coding」を「今年の言葉」に選出しました。世界的に注目されているムーブメントであることがわかります。

バイブコーディングの台頭は、世界のテクノロジーリーダーたちも口をそろえて語っています。

「英語が最高のプログラミング言語だ。今や世界中の誰もがプログラマーになれる」
— Jensen Huang(NVIDIA CEO)

NVIDIAのCEOであるジェンセン・ファン氏は、AIの進化によってプログラミングの敷居が劇的に下がったと繰り返し述べています。専門家に独占されていたソフトウェア開発が、今や普通のビジネスパーソンの手に渡ろうとしている、という認識です。

この言葉は、単なる技術論ではありません。ビジネスのあり方そのものへの問いかけです。「やりたいことがある人が、自分でシステムを作れる時代になった」――それが現実になっています。

日本のビジネス現場への影響

日本では長年、「IT化はITベンダーや専門家に任せるもの」という意識が根強くありました。経営者はシステムのことがわからないから外部に丸投げし、費用も時間もかかり、思ったものが出来上がらない。そんな繰り返しがあちこちの中小企業で起きてきました。

バイブコーディングは、この構造を変える可能性を持っています。現場をよく知っている経営者や担当者が、自分の言葉でシステムを設計し、AIと一緒に作り上げる。外部依存から、自立した情報活用へ。それがこれから起きることです。

製造業の現場で見た、50万円と数時間の差

私が支援している製造業の経営者から、こんな話を聞きました。

従来の方法
業務システムのデータを別システムと連携するプログラムの開発を外部に依頼。見積もりは50万円。完成まで数ヶ月かかる見込み。
バイブコーディングの場合
Claude Codeに「このデータをこの形式に変換して、ここに出力して」と指示するだけ。数時間で完成。費用はツールの月額料金のみ。

50万円と数時間。この差は、技術の話でも才能の話でもありません。「誰がやるか」の話です。

現場の業務をよく知っているのは、外部の開発会社ではなく、その会社の人間です。「こういうデータが、こういう形で出てくれば使いやすい」という感覚は、現場にいる人にしかわかりません。バイブコーディングは、その感覚を持っている人が直接システムを作れるようにするものです。

「誰かの専門にせず、誰もが普通にできるようになればいい」――この事例を聞いたとき、私はそう思いました。IT化を外部に委ねてきた構造そのものを問い直す時期が来ています。

専門家に依存しなくていい時代へ

誤解のないよう言いますが、専門家が不要になるわけではありません。大規模で複雑なシステム開発、セキュリティや品質管理が厳格に求められる領域では、引き続きプロのエンジニアが必要です。

しかし、中小企業の日常的な業務改善ツールや、自社サービスのプロトタイプ、情報発信のための仕組みづくり――そういった領域は、もう自分たちで作れます。外部に50万円を払わなくていいことが、山ほどあります。

私が伝えたいのは、こういうことです。

AIは「専門家の仕事を奪うもの」ではなく、「普通の人が専門家並みのことをできるようにするもの」。バイブコーディングは、その最もわかりやすい形の一つです。

経営者が自分でシステムを持てる時代。現場を知っている人が、現場のためのツールを作れる時代。それが今です。

私自身、元エンジニアでありながら中小企業診断士として長年支援に携わってきた経験から、日本の中小企業がIT化に対して感じてきた「難しい」「わからない」「お金がかかる」という壁を肌で知っています。その壁が、今まさに低くなろうとしています。

使わない理由はありません。まず試してみることが、変革の第一歩です。

よくある質問

バイブコーディングを始めるのに、プログラミングの知識は必要ですか?
基本的には不要です。ただし、「何を作りたいか」「どんな動きをしてほしいか」を具体的に言語化できることが重要です。業務や要件を明確に説明できれば、AIが技術的な部分を担ってくれます。
どのツールを使えばいいですか?
入門としておすすめなのはClaude Code(Anthropic社)です。日本語での指示も自然に理解してくれ、ファイルの作成から修正、公開まで一貫して対応できます。他にもGitHub Copilot、Cursorなどの選択肢があります。
セキュリティや品質は大丈夫ですか?
個人情報や決済を扱う本番システムなど、高い品質基準が求められる領域では、専門家のレビューを組み合わせることを推奨します。一方、社内業務ツールや情報発信用のWebサイトであれば、バイブコーディングで十分対応できます。
費用はどのくらいかかりますか?
主要なAIコーディングツールの月額は数千円〜数万円程度です。外部開発に支払う費用と比較すれば、ほとんどの場合で大幅なコスト削減になります。まずは無料トライアルで試してみることをおすすめします。
どんなものを作れますか?
Webサイト・ランディングページ、業務管理ツール、データ変換スクリプト、顧客向けフォーム、社内ダッシュボード、スマートフォンアプリのプロトタイプなど、幅広いものが対象です。「こんなものを作れるかな?」と思ったら、まずAIに聞いてみましょう。