AIから当たり障りのない答えしか返ってこないのは、AIの性能ではなく、指示の「構造」が原因です。目的・達成条件・前提情報の3つを揃えて渡すだけで、返ってくる答えの具体性は大きく変わります。これは特別な技術ではなく、ロジカルシンキングそのものの応用です。
皆さんこんにちは!AIコンサルタント(中小企業診断士)の津田です。
「AIに商品の紹介文を頼んだのに、どこかで見たような当たり障りのない文章しか出てこない」
支援先の社長から、よくこう言われます。そして決まって、この一言が続きます。
「でも津田さんがやると、具体的な回答が出ますよね。何が違うんですか」
同じClaudeやChatGPTを使っているのに、返ってくる答えの具体性がまるで違う。この差は、AIの知識量でも、プロンプトの文章のうまさでもありません。指示の「構造」が違うだけです。
一般的な答えしか返ってこない理由
AIは、渡された情報の範囲でしか具体的になれません。
Anthropicの公式ドキュメント「Prompting best practices」は、Claudeに指示を出すときの前提を、こう表現しています(出典:Claude Platform Docs「Prompting best practices」)。
a brilliant but new employee who lacks context on your norms and workflows
(優秀ではあるものの、あなたの会社の基準や仕事の進め方を知らない新入社員)
とても腑に落ちる表現だと思います。優秀な新人に「うちの商品の紹介文を書いておいて」とだけ頼んだら、どうなるでしょうか。その人は商品も、客層も、競合も知りません。だから当たり障りのない、一般的な文章を書いてくるはずです。能力の問題ではなく、判断材料がないからです。
AIもまったく同じです。「一般的な答えしか出てこない」のは、AIの性能が低いからではありません。渡した情報が一般的だったからです。
ここが出発点になります。プロンプトとは文章の技巧ではなく、AIが判断するために必要な情報を、抜け漏れなく渡す作業です。そしてこの「抜け漏れなく整理する」ことこそ、ロジカルシンキングそのものなのです。
指示を組み立てる3つの型
私が指示を書くときに揃えているのは、次の3つです。
- 目的 ― 何のために使う文章か
- 達成条件 ― どうなれば合格か
- 前提情報 ― 判断に必要な材料
先ほどの「商品の紹介文を書いて」を、この型で組み立て直してみます。
- 目的:展示会で配るチラシに載せ、初めて当社を知る人に問い合わせをしてもらう
- 達成条件:400字程度。専門用語は使わない。価格の安さは訴求しない
- 前提情報:ターゲットは在庫管理に困っている卸売業の担当者/競合との違いは導入後の伴走支援/自社の強みは同業種での実績
指示は長くなりましたが、難しい言葉は一つも使っていません。やったことは、判断材料を並べただけです。
ここでフレームワークが効いてきます。3C(顧客・競合・自社)でもSTPでも構いません。フレームワークは分析のためだけの道具ではなく、「何を渡し忘れているか」を教えてくれるチェックリストとして使えます。私がターゲットの解像度を上げたり、自社の強みを必ず書き添えたりしているのは、この使い方をしているからです。
もう一つ、公式ドキュメントが挙げている工夫があります。
Providing context or motivation behind your instructions, such as explaining to Claude why such behavior is important, can help Claude better understand your goals and deliver more targeted responses.
(指示の背景にある文脈や動機を伝えること、たとえばなぜその振る舞いが重要なのかを説明することは、Claudeがあなたの目標をより深く理解し、狙いに沿った答えを返すのに役立ちます)
「なぜそうしてほしいのか」を一行添えるだけで、返ってくる答えは変わります。ロジカルシンキングでいう「結論の根拠」を先に渡している、と考えると分かりやすいと思います。
なお、MECEやロジックツリーといった手法そのものについては、「考える技術:ロジカルシンキング編」で解説しています。本記事はその思考法を「AIへの指示」に応用する回という位置づけです。
私の指示が具体的になる、もう一つの理由
ここまで「フレームワークで整理する」と書いてきましたが、正直に申し上げると、それだけではありません。
私が支援先の紹介文やキャッチコピーを作るとき、その会社の経営戦略の策定に関わっているケースがほとんどです。どの顧客層を狙うのか、競合と比べて何で勝つのか、いま何が経営課題なのか。それを一緒に整理したうえでAIに向かっています。
つまり、渡す情報が具体的なのは、私の書き方がうまいからではありません。渡すべき中身を、すでに把握しているからです。フレームワークは、その中身を漏らさず並べるための道具にすぎません。
裏を返すと、こうも言えます。前提情報がうまく書けないとき、それは指示の技術の問題ではなく、自社についての言語化がまだ済んでいないサインかもしれません。
ただ、これは悲観する話ではありません。むしろ、AIへの指示は「自社をどれだけ具体的に説明できるか」を映す鏡になります。書けなかった項目こそ、経営として詰めるべき論点です。
現場でよくある落とし穴
ここまで読んで「やっぱり細かく書かないといけないのか」と感じた方もいるかもしれません。実は、最近いちばん多いつまずきがこれです。
細かく指示しなければいけないと思い込み、面倒になって手が止まってしまう。
これは誤解です。今のAIは、目的と達成条件を示すだけでも十分に働いてくれます。3つの型のうち、まずは目的と達成条件の2つだけで構いません。前提情報が足りなければ、AIのほうから聞いてくれます。
さらに、ClaudeやChatGPTの「プロジェクト」機能に会社の前提情報を書き込んでおけば、毎回の指示は一行で済むようになります。前提を毎回書くのではなく、一度置いておく。ここが手間の分かれ目です。
私自身、GPT-3.5の頃からプロンプトを工夫しないと欲しい答えが返ってこない時代を経験してきました。当時の試行錯誤の積み上げが今の型になっているわけですが、逆に言えば、あの頃ほど作り込む必要はもうありません。技術のほうが、人間に歩み寄ってきています。
そしてもう一つ、支援のときに必ずお伝えしていることがあります。完璧な指示を自分で考える必要はありません。プロンプト自体を、AIに作ってもらえばいいのです。
今日から試せる一歩
公式ドキュメントには、指示が伝わるかどうかを確かめる方法として、こんな一文があります。
show your prompt to a colleague, ideally someone who has minimal context on the task, and ask them to follow the instructions. If they're confused, Claude will likely be too.
(その指示を、できればその仕事の背景をあまり知らない同僚に見せて、指示どおりに動いてもらってください。相手が戸惑うなら、Claudeも同じように戸惑います)
今日からできることを、2つに絞ります。
- いつもの依頼文に、目的と達成条件を一行ずつ足してみてください
- 書ききれないときは、AIにこう聞いてみてください ―「この依頼に足りない情報を、質問の形で挙げてください」
2つ目は、支援の現場でいちばん喜ばれる方法です。足りない情報をAIが列挙してくれるので、それに答えていくだけで、結果として構造化された指示ができあがります。
AIがうまく使えないのは、ツールの知識が足りないからではありません。渡す情報が整理されていないだけです。そしてそれは、訓練で身につく技術です。
※本記事はAnthropic公式ドキュメントを著者が読み解き、中小企業向けに翻訳・考察したものです。
※本記事はAIを活用して作成しています。