会社の将来像は、最初から完璧に描く必要はありません。頭の中の断片を、AIを相手に少しずつ言葉にしていくことから始められます。「将来像が言葉にできない」という悩みを、AIとの対話でどう解きほぐすかをお伝えします。

皆さんこんにちは!AIコンサルタント(中小企業診断士)の津田です。

今回は「「会社をどうするか、分からない」。経営戦略3課題とAIで自分の答えを見つける全体地図」で触れた3つの課題のうち、最初の一歩となる「方向性」の言語化を掘り下げます。

「このまま今のやり方を続けていいのか」「でも、何を変えればいいのか分からない」——先代から受け継いだ会社を、次にどうつなぐか。頭の片隅にずっとある問いなのに、日々の業務に追われて向き合う時間が取れない。

「将来像が見えない」は、あなただけではない

将来像が描けないまま時間が過ぎていくのは、決して珍しいことではありません。

東京商工リサーチの調査によると、2025年の「後継者不在率」は62.60%にのぼり、前年からさらに上昇しています。後継者が決まっていない、あるいは決まっていても具体的な将来像を共有できていない会社が、依然として多いことがうかがえます。

また、2025年版中小企業白書では、事業承継に要する期間として「3年以上」と回答した企業が半数を超え、「10年以上」との回答も一定数あることが示されています。将来像を固め、次の世代や組織に伝えていくには、想像以上に時間がかかるものです。

「うちだけが遅れている」わけではなく、多くの経営者が同じところで立ち止まっています。まずはその前提から始めましょう。

なぜ後回しにしてしまうのか

将来像づくりが後回しになる理由は、たいてい次のどちらかです。

コンサルタントに依頼するという選択肢もありますが、費用も時間もかかり、「そこまでの話でもない」とためらう社長も多いはずです。この「重すぎる」と「放置」の間を埋める手段として、AIが現実的な選択肢になってきています。

AIで方向性を言語化する3ステップ

AIで将来像を言語化する3ステップ 現状の棚卸し、対話による深掘り、将来像の文章化という3ステップのフロー図 ①現状の棚卸し 強み・弱み・悩みを 思いつくまま話す ②対話で深掘り AIからの質問に 答えて掘り下げる ③将来像を文章化 たたき台を出してもらい 自分の言葉に直す 将来像の言語化:3ステップ
いきなり完成形を目指さず、棚卸し→対話→文章化の順で少しずつ形にする。

① 現状の棚卸し:まずは「今の会社の強み」「悩んでいること」「10年後になくなっていてほしいもの」を、思いつくままAIに話します。整理しようとせず、雑談のつもりで構いません。

② 対話で深掘り:AIは「なぜそう思うのですか」「それは誰にとっての価値ですか」といった質問を返してくれます。一人では考えなかった角度から、自分の考えを掘り下げるきっかけになります。

③ 将来像を文章化:出てきた言葉をもとに、AIに将来像の文章案(たたき台)を作らせます。そのまま使うのではなく、「ここは違う」「ここはしっくりくる」と直しながら、自分の言葉に仕上げていきます。

このプロセスは、1回で終わらせる必要はありません。数日おきに話しかけ、少しずつ言葉を育てていくイメージです。

使える公的支援策

※制度の詳細・要件は年度により変わります。最新情報は中小企業庁公式サイトや商工会議所・商工会でご確認いただくか、当方までご相談ください(2026年7月時点の情報です)。

それでも自分だけでは詰めきれない部分

AIは、断片的な考えを言葉にする作業をとても軽くしてくれます。ただし、出てきた将来像が「本当に自社の実情に合っているか」「業界の動きと矛盾していないか」を検証するには、外部の目が必要です。

支援の現場でわかったことですが、経営者が一人でAIと作った将来像は、往々にして「今の延長線上」に寄りがちです。第三者が「本当にそれでいいのか」と問い直すことで、初めて次の一手につながる将来像になります。

完璧な経営計画を今日中に作る必要はありません。まずはAIに、「うちの会社、実はこう考えている」と10分だけ話しかけてみてください。それが、10年後の会社像に向けた最初の一歩です。

将来像がある程度言葉になり、そこから新規事業まで具体的に構想を練りたくなったときは、事業構想を整理するために私が開発した「MiraizConcept」というツールもあります。フレームワークに沿ってAIと対話しながら、一人でも構想を形にできるサービスです(miraiz.biz、14日間無料トライアルあり)。

言葉にした将来像を、次は成長戦略や新規事業へとつなげていきませんか。ひとりで抱え込まず、無料相談で一度お話ししましょう。

【+α:手動で試す/自動化して仕組み化する】

手動(プロンプト):Claudeに「当社は〇〇業、創業〇年。10年後の理想の会社像を一緒に言語化したい」と伝え、対話しながら将来像の文章を作る方法。今日からスマホでも始められます。

自動化(Cowork/Code):将来像づくりで出た「気になるキーワード」(新市場・新商品のヒントなど)を定期的に拾い上げ、業界ニュースや市場データと突き合わせて更新する仕組み。将来像を一度作って終わりにせず、継続的に磨いていけます。

まずは手動で試し、自分に合うと感じたら自動化を検討する、という順番がおすすめです。

よくある質問

Q. 会社の将来像はどこから考え始めればいいですか?

「現状の棚卸し」から始めてください。今の会社の強み・悩んでいること・10年後になくなっていてほしいものを、整理しようとせず思いつくままAIに話すところからで構いません。そこからAIとの対話で深掘りし、最後にたたき台を文章化していきます。

Q. 後継者不在率62.60%というデータは何を意味しますか?

東京商工リサーチの調査によるもので、後継者が決まっていない、あるいは決まっていても具体的な将来像を共有できていない会社が、依然として多いことを示しています。将来像づくりが後回しになっているのは、決して珍しいことではないという前提として押さえておくべき数字です。

Q. AIと一人で作った将来像だけで十分ですか?

AIは断片的な考えを言葉にする作業を軽くしてくれますが、経営者が一人でAIと作った将来像は「今の延長線上」に寄りがちです。本当に自社の実情に合っているか、業界の動きと矛盾していないかを検証するには、第三者の目を交えることをおすすめします。