「今のままでいいのか、変えるべきなのか」——経営戦略のモヤモヤは、方向性・新規事業・ポートフォリオの3層に整理できます。AIとの対話で頭の中の断片を言葉にする方法と、使える公的支援策をお伝えします。
皆さんこんにちは!AIコンサルタント(中小企業診断士)の津田です。
今回は、「会社をどうするか、分からない」という経営者に多い悩みを3つの課題に整理し、それぞれをAIでどう解いていけるかの全体地図をお伝えします。
夜、決算書を眺めながら「今のままでいいのか、変えるべきなのか」と自問を繰り返す——多くの経営者に共通する悩みです。
売上はある。仕事も回っている。でも10年後、この会社がどうなっているか、はっきりとは描けない。誰かに相談したくても、社内に壁打ち相手はいないし、コンサルに頼むほどの話でもない気がする。そんな経営戦略のモヤモヤに向き合う手段として、今、AIが現実的な選択肢になっています。
経営戦略の悩みは「3つの層」に分けられる
診断士として経営相談を受けていると、「経営戦略が課題です」という一言の中に、実は性質の違う3つの悩みが混ざっていることに気づきます。
- 方向性の層——会社を今後どうしていきたいのか、そもそもの将来像が定まっていない
- 新規事業の層——今の商売の先に何を足すか、次の一手が見えない
- ポートフォリオの層——主力事業一本に頼っている状態から抜け出せず、リスクが集中している
この3層は独立しているようで、実はつながっています。方向性が定まらないから新規事業も決められず、決められないから一本足打法のまま時間だけが過ぎていく。順番としては、まず方向性(土台)、次に新規事業(種まき)、最後にポートフォリオ(分散)という流れで手をつけるのが現実的です。
従来の対策が重すぎる理由
これまで、この種の課題への対策といえば、経営計画セミナーへの参加や、コンサルタントとの数か月にわたる策定プロジェクトが一般的でした。
実際、2026年版中小企業白書でも、小規模事業者が事業計画の策定や資金調達計画などの土台作りに十分取り組めていないことが指摘されています。過去の調査でも、経営計画を「作成したことがある」小規模事業者は53.0%にとどまり、約半数が経営計画を作ったことがないという結果が出ています。
理由は単純です。経営計画づくりは、時間もお金もかかる割に、忙しい社長にとって後回しにしやすいテーマだからです。「今度、時間ができたら」と思っているうちに、何年も手つかずのままという会社は少なくありません。
AIで何が変わるのか
ここでAIが有効なのは、「経営計画を最初から完璧に作る」のではなく、「頭の中にある断片をまず言葉にする」という入口の作業を、驚くほど軽くしてくれるからです。
- 今の会社の強み・弱み・機会・脅威を、対話しながら整理できる(SWOT分析の壁打ち)
- 「10年後どうなっていたいか」を、断片的な言葉から一つの文章に組み立ててくれる
- 業界の一般的な成長パターンや、似た規模の会社の戦略の型を、たたき台として提示してくれる
一人で白紙のノートに向き合うのはつらくても、AIに「うちの会社、実はこう考えている」と話しかけるところからなら始められます。
支援の現場でわかったことですが、経営者の頭の中には答えの材料がすでにあることがほとんどです。足りないのは、それを引き出して言葉に変える「聞き役」なのです。
使える公的支援策
戦略づくりそのものを支援する公的な仕組みもあります。
- 商工会議所・商工会:経営指導員が無料で経営分析や事業計画づくりに付き合ってくれる、最も身近な相談窓口です。小規模事業者持続化補助金の申請に必要な「事業支援計画書(様式4)」の発行元でもあり、将来像を言葉にする最初の相談相手として頼れます
- 小規模事業者持続化補助金:言語化した将来像をもとに、新しい販路開拓や新たな取組みに踏み出す際の経費を支援する制度
- 中小企業新事業進出補助金:今の事業で培った強みを活かして新市場・新分野に進出する際の設備投資等を支援する制度(2026年度中に「ものづくり補助金」と統合され「新事業進出・ものづくり補助金」となる予定です)
※制度の詳細・要件・申請期間は年度によって変わります。最新情報は中小企業庁の公式サイトや商工会議所・商工会でご確認いただくか、当方までご相談ください(2026年7月時点の情報です)。
それでも一人では難しい理由
AIは優秀な壁打ち相手になりますが、「自社の数字」「業界特有の事情」「自分自身も気づいていない前提」まで汲み取って、精度の高い戦略に仕上げるには、対話を重ねる根気と、出てきた案を客観的に評価する視点が要ります。
一人で使うと、AIが出したもっともらしい答えをそのまま受け取ってしまい、「本当にうちに合っているか」の検証が甘くなることもあります。ここは、診断士のような第三者の目を交えることで精度が上がる領域です。
経営戦略は、一夜にして決まるものではありません。ですが、「10年後どうしたいか、まだ言葉にできていない」という状態から一歩踏み出すことはできます。まずは、次の記事から自社に近いテーマを選んで読んでみてください。
- 方向性が見えない → 「10年後の会社像が描けない社長へ。AIで事業の方向性を言語化する」(S-09-01)
- 成長戦略が漠然としている(S-09-02・準備中)
- 次に売るものが見つからない(S-09-03・S-09-04・準備中)
- 主力事業への依存が不安(S-09-05・準備中)
特に②新規事業のように「次に何をやるか」を一人で具体的なところまで練り込みたい場合は、事業構想を整理するために私が開発した「MiraizConcept」というツールもあります。フレームワークに沿ってAIと対話しながら、頭の中の構想を一人でも形にできるサービスです(miraiz.biz、14日間無料トライアルあり)。
会社の将来を、AIと一緒に言葉にしてみませんか。ひとりで悩む前に、無料相談で一度お話ししましょう。
【+α:手動で試す/自動化して仕組み化する】
手動(プロンプト):Claudeのチャット画面に「当社は〇〇業、従業員〇名、売上〇億円。10年後の会社像を一緒に整理したい」と入力し、対話しながらSWOT分析や将来像のたたき台を作る方法。今日から誰でも始められます。
自動化(Cowork/Code):業界の市場データ・自社の決算データなどを定期的に読み込ませ、経営戦略の前提条件(市場動向・自社の数字の変化)を継続的にアップデートする仕組み。年1回の見直しで終わらせず、経営計画を「生きた資料」にできます。
どちらが正解ということはなく、まず手動で試して感触をつかみ、続けられそうなら自動化を検討する、という順番がおすすめです。
よくある質問
Q. 経営戦略の3つの課題とは何ですか?
「方向性」(会社の将来像が定まっていない)、「新規事業」(次の一手が見えない)、「ポートフォリオ」(主力事業一本に依存しリスクが集中している)の3層です。方向性が定まらないと新規事業も決められず、決められないから一本足打法のまま時間が過ぎていくという構造でつながっています。
Q. 経営戦略づくりはどこから手をつければいいですか?
土台となる「方向性」から始めるのが現実的です。方向性→新規事業→ポートフォリオの順に、まず10年後の会社像を言葉にすることから着手してください。いきなり全体を完成させる必要はありません。
Q. 経営戦略の検討をAIと一人で進めても大丈夫ですか?
壁打ち相手としては非常に有効ですが、AIが出したもっともらしい答えをそのまま受け取ると、検証が甘くなることがあります。自社の数字や業界特有の事情を踏まえた精度を上げるには、診断士など第三者の目を交えることをおすすめします。