Claudeへの指示に見本を3〜5個添えるだけで、言葉で説明しきれない体裁の細部まで出力が揃います。Anthropic公式が「Use examples effectively(見本を効果的に使う)」と呼ぶこの原則を、実際の業務場面で解説していきます。

皆さんこんにちは!AIコンサルタント(中小企業診断士)の津田です。

今回は、Claude活用テクニック大全シリーズ第3回として、前回・前々回の「理由を添える」「明確に伝える」に続く基本原則「見本を効果的に使う(Use examples effectively)」を、実際の業務場面をもとに解説します。

こんな場面はありませんか

BtoB商社で働くケンジさんの会社では、営業担当5名が毎日の商談後にClaudeへ日報の清書を頼んでいます。指示は「当社の書式に合わせて、丁寧にまとめてください」の一文だけです。ところが返ってくる日報は担当によってばらばらで、ある担当分は箇条書き、別の担当分は段落形式、見出しの言葉遣いも「訪問先」だったり「顧客名」だったりと揃いません。週次ミーティングの前にケンジさんが5人分の日報を同じ体裁へ手直しする作業に、毎回30分ほどかかっています。指示の文言はどの担当にも同じはずなのに、なぜ仕上がりの形だけが揃わないのでしょうか。

このテクニックは何か(公式解説)

Anthropic公式のClaude Platform Docs「Prompting best practices」の「General principles」には、前回・前々回の「明確に伝える」「理由を添える」に続けて「Use examples effectively(見本を効果的に使う)」という原則があります(出典:https://platform.claude.com/docs/en/build-with-claude/prompt-engineering/claude-prompting-best-practices )。公式は次のように説明します。

「Examples are one of the most reliable ways to steer Claude's output format, tone, and structure. A few well-crafted examples (known as few-shot or multishot prompting) improve accuracy and consistency.」(見本は、Claudeの出力の形式・トーン・構造を導くための、もっとも信頼できる方法のひとつだ。よく作り込まれた数個の見本〈few-shotまたはmultishotプロンプティングと呼ばれる〉は、正確さと一貫性を高める)

「few-shot」「multishot」は見本を複数渡す書き方の呼び名です。前々回が"何を・どう"、前回が"なぜ"を伝える技術なのに対し、今回は言葉で説明しきれない体裁の細部を見本で示す技術です。「当社の書式に合わせて」では伝わらない細部も、過去の日報を見本として渡せば読み取って揃えてくれます。

見本を選ぶ条件として、公式は次の3点を挙げます。

「Relevant: Mirror your actual use case closely. Diverse: Cover edge cases and vary enough that Claude doesn't pick up unintended patterns. Structured: Wrap examples in <example> tags (multiple examples in <examples> tags) so Claude can distinguish them from instructions.」(関連性:実際の使用場面に近いものにする。多様性:想定外の癖をClaudeが拾わないよう、例外的なケースも含めて十分にばらつきを持たせる。構造化:見本を<example>タグ〈複数なら<examples>タグ〉で囲み、Claudeが指示文と見本を区別できるようにする)

「多様性」とは、似た見本ばかりだと関係ない癖まで真似るため、業種や進み具合が異なる日報をあえて混ぜる、という意味です。公式は3〜5個が最良とも述べます。見本を並べて渡す工夫であり、チャット版・Cowork・Claude Codeのどれでも同じように効きます。

指示のみの場合と、指示に見本3〜5個を添えた場合の日報の仕上がりの違い 見本を添えない指示では担当ごとに日報の体裁がばらつき週次の手直しが発生するが、過去の日報3件を見本として渡すと、担当が誰であっても見本と同じ体裁に揃い手直しがほぼ不要になる。 指示のみ 指示+見本3〜5個 「当社の書式に合わせて」 (見本なし) 過去の日報3件を <example>タグで提示 担当5名分の日報 Aさん:箇条書き Bさん:段落形式 Cさん:見出し表記が違う 週次で30分の手直しが発生 担当5名分の日報 Aさん:見本と同じ体裁 Bさん:見本と同じ体裁 Cさん:見本と同じ体裁 手直しはほぼ不要に
図:見本を添えない指示では担当ごとに日報の体裁がばらつきますが、過去の日報3件を見本として渡すと、担当が誰であっても仕上がりの体裁が揃います。

このテクニックは何を解決するのか

ケンジさんの会社で日報の体裁が担当ごとに揃わないのは、「当社の書式」という言葉だけでは見出しの言葉遣いや箇条書きか段落かといった細部まで伝わらず、Claudeがそのつど別の解釈で補っているからです。見本を渡さなければ、担当が増えるほど癖の違う日報が積み重なり、週次の手直しに毎回30分を費やし続けることになります。

見本を3〜5個渡すと、Claudeは言葉で説明しにくい体裁の細部までそこから読み取って揃えるため、手直しの手間がほとんど不要になります。効くのは、日報・見積書・議事録のように毎日・毎週繰り返し作る定型文書で、体裁を揃える価値が高い業務です。逆に、一度きりの相談や自由な文章で構わない下書きには、見本を用意する手間に見合う効果は薄くなります。

実務でこう使う

【準備】最初に一度だけ:過去の日報の中から、業種や商談の進み具合が異なる3件を選んでおきましょう(公式が言う「多様性」を満たすため、似た内容ばかりでなく敢えてばらつきを持たせます)。繰り返し使う場合はCLAUDE.md(Cowork/Claude Codeで自動的に読み込まれる指示書ファイル、拡張子.md)に見本3件を保存しておくと、毎回貼り付ける手間が省けます。チャット版だけで使う場合は、プロンプトの中に直接見本を貼り付ければよいでしょう。

【依頼】毎回:

以下は過去の日報3件です。この3件と同じ見出し構成・書き方に揃えて、
本日の日報を作成してください。

<examples>
<example>
【日付】2026-07-28 【訪問先】株式会社明和商事 【担当】佐藤
【商談内容】新商品Aの提案。価格については次回持ち帰り。
【所感】担当者の反応は好感触。次回は部長同席の予定。
</example>
<example>
【日付】2026-07-29 【訪問先】△△工業株式会社 【担当】田中
【商談内容】既存契約の更新条件を打診。予算確保は年明け見込み。
【所感】急ぐ案件ではないため、月1回のフォローに切り替える。
</example>
<example>
【日付】2026-07-30 【訪問先】有限会社山口製作所 【担当】鈴木
【商談内容】クレーム対応の御礼訪問。再発防止策を説明し了承を得た。
【所感】信頼回復のきっかけになった。次回は追加発注の相談予定。
</example>
</examples>

本日の訪問先:株式会社北浦電機 担当:伊藤
商談内容:新規開拓の初回訪問。自社設備の見学案内を受けた。
所感:導入時期は未定だが、資料送付の約束を取り付けた。

見出しの並び順・言葉遣い・分量感まで見本に揃うため、担当が誰であっても仕上がりの体裁が変わりません。

今日から試せること

次にClaudeへ体裁を揃えたい文書を頼むとき、言葉で説明する代わりに、過去のよい仕上がりを3件選んで見本として渡してみてください。見本の数だけ、揃えたい細部が正確に伝わります。

前回の「理由を添える」、前々回の「明確に伝える」とあわせて読むと、指示文の"何を・どう"と"なぜ"、そして言葉にしにくい"体裁の細部"の3つを押さえられます。Claudeを触ったばかりの方は「Claudeとは何か?ChatGPTとの違いと、経営者から選ばれる5つの理由」から、AI活用の始め方に迷っている方は「AIって何から始めたらいいか分からない」人が最初にやるべき3つのこともあわせてどうぞ。

※本記事はAnthropic公式ドキュメントを著者が読み解き、中小企業向けに翻訳・考察したものです。