「同じサービスは他にもある」——でも「あなたが提供するサービス」は、世界にひとつだけです。独自性の源泉は、特別なスキルを持つことではありません。あなたのキャリアが重ねてきた「経験の組み合わせ」そのものが、誰にも真似できない価値になります。
皆さんこんにちは!事業構想×生成AI活用アドバイザー(中小企業診断士)の津田です。
今回は、創業者向けシリーズのPhase 0・第2弾として、「なぜ『あなた』がやるのか」という独自性の問いに取り組みます。前回の記事でWhy(なぜやるのか)を言語化した方は、ぜひセットで読んでみてください。
「同じサービスは他にもある」という不安の正体
起業を考えるとき、多くの方がこんな不安を口にします。「コンサルタントはたくさんいる」「料理教室はもう飽和している」「同じようなサービスは検索すればすぐ出てくる」——。
しかし、この不安には前提の誤りがあります。競合と比べているのは「サービスのカテゴリ」であって、「あなた自身」ではないのです。料理教室というカテゴリに競合は多くても、「30年間の病院栄養士経験を持ち、嚥下障害のある高齢者の家族向けに家庭でできる調理法を教える料理教室」は、あなたにしか開けません。
ポイント:競合が多いのは「カテゴリ」であって「あなた」ではありません。独自性は、あなたのキャリアの中にすでに存在しています。それを発見して言語化することが、この記事のテーマです。
独自性はスキル単体ではなく「掛け算」にある
「私には特別なスキルがない」と感じている方は多いです。でも、独自性はスキル単体から生まれるものではありません。スキルA × スキルB × 業界知識 × 価値観——この組み合わせが、模倣困難な独自性を生み出します。
たとえば「営業スキル」だけなら他にも大勢います。「介護業界の知識」だけでも同様です。しかし「20年の営業経験 × 介護施設での管理職経験 × 採用・人材育成の経験」という組み合わせを持つ人は、ほとんどいません。その人が「介護業界向けの採用・定着支援」を始めたとき、それは誰も簡単には真似できないサービスになります。
キャリアが長いほど、掛け算は複雑になります。20年・30年のキャリアを積んできた方が持つ「経験の組み合わせ」は、若い起業家が短期間で模倣できるものではありません。長いキャリアは、模倣困難性という意味では圧倒的な資産です。
AIで自分の「掛け算」を発見する
問題は、自分の掛け算は自分では見えにくいことです。「当たり前にやってきたこと」「自然にできること」は、自分にとっては空気のような存在で、価値として認識しにくい。AIに壁打ちしてもらうことで、外側からその組み合わせを照らし出せます。
プロンプト例①(経験の掛け算を発見する・対話式)
私がこれまでのキャリアで積んできた「経験の組み合わせ」を一緒に整理してください。
ただし、一度にすべて聞かず、以下のルールで進めてください。
・質問は必ず1問だけしてください
・私が答えたら、次の質問をしてください
・質問は全部で4〜5問程度
・すべての質問が終わったら、私の経験の「ユニークな組み合わせ」を3パターン提示し、それぞれが模倣困難である理由を説明してください
では、最初の質問から始めてください。
AIが提示した「組み合わせ」を読んで、「確かに、これを両方できる人は少ないかもしれない」と感じた瞬間があれば、そこが独自性の入り口です。
プロンプト例②(競合との違いを確認する)
私の経験の組み合わせ:(プロンプト①の結果を貼る)
この組み合わせを持つ私が「○○(例:中小企業の採用支援)」をサービスとして提供する場合、一般的な競合(採用コンサルタント)と比べてどんな違いが生まれますか?
「あなたにしかできないこと」「競合が持っていない視点」「お客さんが感じる違い」の3つの観点で教えてください。
このプロンプトで出てきた「あなたにしかできないこと」が、ホームページの強み紹介や、営業時の自己紹介の核になります。
「掛け算」を顧客への言葉に変える
独自性を発見したら、次はそれを「お客さんに伝わる言葉」に変換します。ここで多くの方が陥るのが、スペックの羅列です。「○○の経験が20年あります」「○○の資格を持っています」——これは実績の説明であって、独自性の言語化ではありません。
お客さんが知りたいのは、「その経験の組み合わせが、自分の問題解決にどう役立つか」です。独自性は、常にお客さんのベネフィットと結びついて初めて伝わります。
- スペックの言葉:「営業20年・介護管理職10年の経験があります」
- 独自性の言葉:「現場で人が辞める瞬間を見続けてきたからこそ、採用の入口だけでなく、定着まで一緒に考えられます」
後者の言葉は、経歴書には書けない「あなたにしか語れない視点」です。この視点こそが、お客さんの「この人に頼みたい」につながります。
プロンプト例③(スペックを独自性の言葉に変換する)
私の経験の組み合わせ:(プロンプト①の結果を貼る)
私が提供したいサービス:(例:介護施設向けの採用・定着支援)
この情報をもとに、「スペックの言葉」を「独自性の言葉」に変換してください。
スペックの言葉とは「○年の経験があります」「○○の資格を持っています」という経歴の説明です。
独自性の言葉とは「○○だからこそ、△△できます」という、あなたにしか語れない視点の言葉です。
変換後の言葉を3パターン提案してください。それぞれ1〜2文で、お客さんが「この人に頼みたい」と感じられる表現にしてください。
出てきた3パターンの中で「これは自分が話しやすい」「お客さんに刺さりそう」と感じた言葉を選んで、ホームページの自己紹介・名刺の一言・初回面談の冒頭の言葉として使ってみてください。使いながら少しずつ磨いていくことで、あなただけのフレーズになっていきます。
独自性は育てるもの——始めてから深まる
独自性は、起業する前に完全に言語化できなくても構いません。むしろ、実際にお客さんと関わりながら「この部分で特に喜ばれる」「ここは他の人と違うと言われる」という体験を重ねることで、独自性はより鮮明になっていきます。
独自性は「発見するもの」ではなく「育てるもの」です。今日見えている掛け算は、1年後には新しい経験が加わってさらに深まります。まず今持っている組み合わせを言語化して、使いながら磨いていきましょう。
よくある質問
Q. 経験が一つの業界に偏っています。それでも掛け算になりますか?
はい、なります。同じ業界の中でも「職種の違い」「立場の違い」「時代の違い」が掛け算を生みます。たとえば「製造業一筋30年」でも、現場作業員→製造管理→品質保証→経営企画という変遷があれば、その4つの視点を持つ人は希少です。業界が一つでも、役割と経験の深さで十分な独自性が生まれます。
Q. 掛け算の「数」が多いほど、独自性は高まりますか?
必ずしも多ければいいわけではありません。大切なのは「組み合わせが希少かどうか」と「その組み合わせがターゲットの課題解決に直結するかどうか」です。2〜3つの経験でも、その組み合わせがターゲットにとって珍しければ、十分な独自性になります。