「AIエージェント同士がつながる」という話を読むと、正直、シリコンバレーの最先端の実験であって、自分の会社には関係ない話に聞こえるかもしれません。実際のところ、これは今すぐ動くべき話なのか、それとも数年先を見据えて知っておけばいい話なのか。今回は、エージェント同士がつながる未来の技術「Agent2Agent(A2A)」を入り口に、中小企業の経営にとってどんな意味があるのか、その距離感を確かめてみたいと思います。

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Agent2Agent(A2A)は、その名の通り「エージェントとエージェント」が直接会話するための共通ルール(プロトコル)です。2025年にGoogleが提案し、AIエージェント同士が、会社や組織の壁を越えて情報をやり取りしたり、作業を依頼し合ったりできるようにすることを目指しています。Google Cloudが2026年3月に発表した「5 insights to build your agentic AI advantage in 2026」では、AIエージェントの進化を段階的に描いており、最初の主戦場は社内のバックオフィス業務(財務・調達・契約管理など)、その次の段階として取引先や仕入先とエージェント同士がつながる時代が来ると位置づけています。

この構想を"絵に描いた餅"で終わらせないために、業界団体が作られ、名だたるテック企業が動き始めています。Google・Microsoft・Amazon・Salesforce・SAPといった、ふだんは競合するはずの企業が、A2Aという共通ルールづくりで足並みを揃え、2025年6月にLinux Foundationという中立の非営利団体に運営を委ねました。さらに2025年12月には、Anthropic・OpenAIも加わり、複数の関連規格をまとめて中立に運営する新団体「Agentic AI Foundation」が発足しています。

そして、先端企業が実際に作り始めているのは、社外との連携だけではありません。むしろ今のところ動きが早いのは、社内でエージェント同士を連携させる仕組みの方です。たとえばAWSが2026年6月に公開した実証デモでは、1つの「司令塔エージェント」が、在庫を分析するエージェント・代替の仕入先を探すエージェント・実際に発注を実行するエージェントといった、役割の異なる複数のエージェントに作業を振り分ける仕組みを見せています。調達エージェントが見つけた仕入先を、コンプライアンス担当のエージェントが自動で確認する、といった部門をまたぐ連携の例もすでに紹介されています。Oracleが2026年6月29日に発表した新機能(在庫管理・サプライヤー審査・生産準備を複数のAIエージェントが連携して行う)も、まずは自社のSCMシステムの中で複数のエージェントを組み合わせる形が中心です。

つまり、"外の会社とつながる"未来と、"社内の複数のエージェントが連携する"未来は、同じA2Aという技術の上にありながら、進むスピードがまるで違います。KPMGが2026年6月に公表した調査では、社内で複数のAIエージェントを連携させて運用している企業は、前回調査の9%から18%へと、この1四半期で倍増しています。一方、取引先や仕入先のエージェントと直接つながる例は、Tyson FoodsとGordon Food Serviceのような一部の先行事例にとどまり、まだ普及と呼べる段階にはありません。

AIエージェント連携の「二つの速度」― 社内連携と社外連携 社内で複数のAIエージェントを連携させる動きはKPMG調査で18%まで急速に広がっている一方、取引先など社外とエージェントを連携させる動きはTyson Foods等一部の先行事例にとどまっていることを示す図。社内での実績づくりが社外連携の土台になっていくと考えられる。 社内 ― 複数エージェントの連携 18% KPMG調査:前四半期9%から倍増中(2026年6月時点) 社外 ― 取引先とのエージェント連携 一部の先行事例のみ 例:Tyson Foods・Gordon Food Service(2025年7月時点) 社内での実績づくりが、社外連携が広がる土台になっていくと 考えられる(著者による仮説)
図:社内の複数エージェント連携は急速に広がっている一方、社外連携はまだ一部の先行事例のみ。二つの速度が同居している。

立ち止まって考える:日本の中小企業にどう関係するか

ここまで調べて見えてきたのは、"社外連携"と"社内連携"という二つの速度が、同じ「AIエージェント連携」という言葉の中に同居しているということです。社外との連携は、業界団体が土台を作り始めたばかりの、文字通り遠い未来の話です。一方、社内で複数のエージェントを連携させる話は、すでに大手企業が実際に作り、KPMGの数字でも急速に増えている、今まさに動いている話です。

しかもこの二つは、無関係ではなさそうです。Google Cloudのレポート自体が、"まず社内のバックオフィス業務から、その次に社外との連携へ"という順番で進化を描いています。理屈としても筋が通ります。社内のエージェント同士なら、間違えても被害は自社の中で収まりますが、社外の会社のエージェントとつながるとなると、信頼・支払い・責任の所在といった、技術以前の問題が一気に増えます(決済のためのAP2という規格や、中立の運営団体がわざわざ作られたのも、この壁を越えるための土台づくりです)。自社の中でエージェント同士の連携に慣れていない会社が、いきなり取引先とつながるのは現実的ではありません。つまり、社内での実績づくりが、社外連携が広がるための助走になっていくと考えるのが自然でしょう。

社内での実績づくりが、社外連携が広がるための助走になっていく――社外とつながる心配をする前に、まず自社の中でバラバラに使っているAI活用を"つなぐ"ところから始める方が近道です。

だとすると、中小企業にとっての当面の目標は、"社外とつながる準備"ではなく、"社内のエージェント連携に近づいていく"ことだと言えそうです。すでに営業や広報でChatGPTなどを個別に使っている会社であれば、ゼロから始めるのではなく、今バラバラに使っているAI活用を"つなぐ"ところから始められます。この連載の第3編(利益・収益性編)で扱った「同じ情報を何度も転記している」という課題は、まさにこの"つなぎ"を人が担っている状態を指しており、社内エージェント連携はその転記・調整作業を減らす延長線上にあります。

やらなかった場合にすぐ困るわけではありません。KPMGの数字が示す通り、大企業でさえまだ18%です。ただし、この連載の第8回で扱ったPwCの調査では、AIの成果を大きく伸ばす企業とそこそこで終わる企業の差は、AIをどれだけ横断的に・組織的に使えているかで開いていくという結果が出ていました。社内でエージェント同士を連携させている会社は、担当者が転記や確認作業に取られる時間を減らせる分、その差はゆっくりと、しかし確実に積み上がっていくはずです。今日明日で差がつく話ではありませんが、"やった組織が相対的に有利になっていく"というのが、正直な見立てです。

今の自分の仮説・気づき

今の時点での仮説は、AIエージェント連携には"社内"と"社外"という二つの速度があり、中小企業が当面目指すべきは後者(社外連携)ではなく前者(社内連携)だということです。社外連携はまだ何年もかかる標準化の途中ですが、社内でエージェント同士を連携させる動きはすでに始まっており、しかもそれが将来の社外連携への土台にもなります。今すぐ取引先とのつながりを心配する必要はありませんが、自社の中でバラバラに使っているAIを"つなげられないか"という視点は、今から持っておく価値があると考えています。

読者への問いかけ

自社の中で、営業・マーケティング・経理などがそれぞれ個別にAIを使っている場面はありませんか。それぞれのAIが今どうつながっていて、どこを人が手作業でつないでいるか、一度書き出してみてください。そこが、社内エージェント連携の出発点になります。どこから手をつけられそうか一緒に整理したい方は、無料相談もご利用いただけます。

※本記事は海外の公開レポートを著者が読み解き、日本の中小企業向けに翻訳・考察したものです。
※本記事はAIを活用して作成しています。