長い資料をClaudeに読ませるときは、資料を先に、質問を最後に置くだけで見落としが減ります。Anthropic公式が「Long context prompting(長い資料の渡し方)」と呼ぶこの原則を、実際の業務場面で解説していきます。
皆さんこんにちは!AIコンサルタント(中小企業診断士)の津田です。
今回は、Claude活用テクニック大全シリーズ第4回として、前回の「見本を示す」に続く基本原則「長い資料の渡し方(Long context prompting)」を、実際の業務場面をもとに解説します。
こんな場面はありませんか
取引先との業務委託契約書(A4で15ページ、条文数40条超)をClaudeに読ませ、「支払い条件と契約解除条項を教えてください」と質問しました。返ってきた答えは冒頭の一般条項をなぞっただけで、後半の第32条にある解除条件には触れていませんでした。長い資料を読ませるたびに、重要な条文が見落とされる「ムラ」に悩まされていないでしょうか。
公式ドキュメントを読み解く:これはどんな技術か
出典はClaude Platform Docs「Prompting best practices」General principles章「Long context prompting」節(https://platform.claude.com/docs/en/build-with-claude/prompt-engineering/claude-prompting-best-practices)です。
公式の定義は「When working with large documents or data-rich inputs (20k+ tokens), structure your prompt carefully to get the best results」。20k+ tokens=Claudeが一度に処理する情報量の単位(トークン)で2万以上という意味で、つまり「契約書や仕様書のような分量の多い資料は、渡し方を工夫しないと実力を発揮できない」と言っています。
工夫は3つです。①資料を先に置く。「Put longform data at the top: Place your long documents and inputs near the top of your prompt, above your query, instructions, and examples.」=長い資料は質問より先、プロンプトの一番上に置け、という意味です。続く「Queries at the end can improve response quality by up to 30 percent in tests, especially with complex, multidocument inputs.」=質問を最後にすると、複数文書にまたがる複雑な入力ではテストで回答品質が最大30%改善した、という実測値です。
②タグで構造化する。「Structure document content and metadata with XML tags: When using multiple documents, wrap each document in <document> tags with <document_content> and <source>…subtags for clarity.」=複数の資料を渡すときは1つずつdocumentタグで囲み、中に本文用と出典用のタグを分けて入れよ、という意味です。一般原則にある「XMLタグで構造化する」という考え方を、長文資料向けに具体化したものにあたります。
③先に引用させる。「Ground responses in quotes: For long document tasks, ask Claude to quote relevant parts of the documents first before carrying out its task.」=長い文書を扱うタスクでは、作業に取りかかる前にまず該当箇所を引用させる、という意味です。関係ない部分に気を取られず、該当箇所に焦点を絞って考えてもらえます。
3つとも、Claudeが一度に見渡せる情報量(コンテキストウィンドウ、いわば机の広さ)の中で、重要な情報ほど埋もれやすいという性質への対策です。冒頭の場面で解除条項が見落とされたのは、資料の分量に対して注意が全体に均等に向かなかったためで、この3つの工夫で注意を該当箇所に集められます。対象製品はチャット(claude.ai)・Cowork・Claude Codeのいずれでも使えます。プロンプトの書き方そのものの工夫なので、ファイルを貼り付けるチャットでも、ファイルを接続するCoworkでも同じ順序を意識するだけで効果があります。
このテクニックは何を解決するのか
使わないと、資料を貼ってから質問を書く自然な順番のまま渡してしまい、後半の条項や複数文書の情報を見落としたり、関係ない部分を拾われて的外れな回答が返ってきます。冒頭の場面がまさにこれです。
使うと、資料を先・質問を後の順に組み立て直すだけで見落としが減り、複数文書をdocumentタグで出典ごとに分ければどの資料から拾った情報か取り違えなくなり、引用を先に求めれば該当箇所に焦点を絞った回答が得られます。
効くのは契約書・仕様書・複数回分の議事録など、分量が多い資料を読ませるときです。公式も「20k+ tokens」、つまりある程度まとまった分量を対象と明記しており、1〜2文の短い質問には効果が薄いことも念頭に置いてください。
実務でこう使う:具体例で見る
こんな場面を想定します
取引先3社から届いた見積書を比較し、最も有利な1社を選びたいとします。
このテクニックをこう使う
【準備】最初に一度だけ:作業用フォルダに3社分の見積書を保存し、ファイル名に社名を入れておきます(例:A社見積.pdf)。CLAUDE.mdやCoworkの指示文の冒頭に「資料は先に全部渡すので、質問は最後に書く」という一文を書いておくと、毎回意識せずに済みます。
【依頼】毎回:資料を貼ったあとに、まとめて次のように依頼します。
<document><document_content>(A社見積書)</document_content><source>A社</source></document> <document><document_content>(B社見積書)</document_content><source>B社</source></document> (C社分も同様に<document>タグを追加) 3社の見積書を比較し、まず該当箇所を引用したうえで①合計金額②納期③保証条件を表にまとめ、 最も有利な1社とその理由を社内会議用のレポート形式(Word想定)でまとめてください。
今日から試せること
次に長い資料をClaudeに読ませるときは、資料を全部貼ってから、最後に質問を書いてみてください。それだけで見落としが減ります。
前回の「見本を示す(few-shot)」から続けて読むと、見本で体裁を揃える技術と、資料の渡し方を工夫する技術の両方を押さえられます。連載の最初から読みたい方は「明確に伝える」・「理由を添える」もどうぞ。Claudeを触ったばかりの方は「Claudeとは何か?ChatGPTとの違いと、経営者から選ばれる5つの理由」もあわせてご覧ください。
※本記事はAnthropic公式ドキュメントを著者が読み解き、中小企業向けに翻訳・考察したものです。