Claudeへの指示は、「〜するな」ではなく「〜せよ」で書くと、狙った出力形式が安定します。Anthropic公式が「Control the format of responses(出力の形式をコントロールする)」と呼ぶこの原則を、実際の業務場面で解説していきます。
皆さんこんにちは!AIコンサルタント(中小企業診断士)の津田です。
今回は、Claude活用テクニック大全シリーズ第5回として、前回の「長い資料の渡し方」に続く基本テクニック「出力の形式をコントロールする(Control the format of responses)」を、実際の業務場面をもとに解説します。
こんな場面はありませんか
毎月月末、5社の取引先へ送る進捗報告書の下書きをClaudeに任せている経営者は少なくありません。ところが出力のたびに見出しの数も箇条書きの分量もバラバラで、ある月は箇条書きだらけ、別の月は文章がずらずら続きます。結局、体裁を整える手直しに1社あたり10分、5社で50分がかかる。「箇条書きにしないで」と頼んでも、次の回にはまた箇条書きが混じってしまう――こうした出力のブレに悩んでいませんか。
公式ドキュメントを読み解く:これはどんな技術か
出典は、Claude Platform Docs「Prompting best practices」のOutput and formatting章にある「Control the format of responses(出力の形式をコントロールする)」節です(https://platform.claude.com/docs/en/build-with-claude/prompt-engineering/claude-prompting-best-practices#control-the-format-of-responses)です。
このテクニックは、Claudeの出力形式(見出しの有無、箇条書きか文章か、太字の量など)を狙いどおりに固定するための、指示文の書き方の工夫です。公式ドキュメントは「出力の書式を制御する、特に効果的な方法がいくつかある」として、4つの方法を挙げています。中心となるのが1つ目と3つ目です。
1つ目は「してほしくないことでなく、してほしいことを伝える」です。公式は具体例をこう示しています。
"Instead of: 'Do not use markdown in your response' / Try: 'Your response should be composed of smoothly flowing prose paragraphs.'"
これは「回答にマークダウン(見出し・箇条書き・太字などの装飾記法)を使うな」と書く代わりに、「回答は滑らかに流れる文章の段落で構成してください」と書いてみてください、という意味です。つまり禁止形の指示ではなく、達成してほしい状態そのものを直接示したほうが、狙った形式に近づきやすいということです。禁止形だと「じゃあ何ならいいのか」をClaudeが自分で埋め合わせる必要がありますが、達成してほしい状態を直接渡せば迷う余地が減ります。
2つ目は、XMLタグ(<report_format>のように文章に目印をつける記法)で「ここにこの形式で書いてほしい」と示す方法。3つ目が「プロンプトの書き方自体を、望む出力に近づける」です。公式はこう述べています。
"The formatting style used in your prompt may influence Claude's response style. ... removing markdown from your prompt can reduce the volume of markdown in the output."
これは、指示文自体に使っている書式(箇条書きや太字の多さ)が、そのままClaudeの回答スタイルに影響することがある、指示文からマークダウンを取り除くと出力のマークダウンの量を減らせる、という意味です。文章で書いてほしいなら、指示文自体も文章で書くのが近道だということです。4つ目は、避けたい書式・望む書式を詳しく書いた指示文をあらかじめ用意しておく方法です。
このテクニックは、連載第1回で扱った「明確に伝える」の応用形にあたります。「明確に伝える」が指示全般の書き方の原則だとすれば、こちらは「出力の見た目」という1つの側面に絞った、より具体的な打ち手です。向く場面は、報告書・提案書・議事録など、見出しや文章量の型を決めて繰り返し使う定型文書づくり。その場限りの雑談や、形式そのものを毎回変えたい単発の相談には効果を実感しにくく、無理に使う必要はありません。
このテクニックは何を解決するのか
「箇条書きにしないで」と一言添えるだけでは、その回は効いても、次のやりとりではまた箇条書きに戻ってしまう――こうした揺れが実務では起きがちです。使わない場合、体裁を整える手直しの時間が繰り返し発生し、5社分の報告書なら月に50分が体裁直しだけに消える計算です(この数字はイメージをつかむための一例です)。
このテクニックを使うと、「〜するな」でなく「〜せよ」で狙った形式を明示し、必要ならCLAUDE.md(後述)などに一度書いておくことで、毎回同じ形式で出力が安定します。効果が大きいのは、報告書・見積書・提案書など、社内外で見た目の型が決まっている定型文書を繰り返し作る業務です。逆に、内容も形式も毎回変わる一回限りの相談では、このテクニックの出番は薄くなります。
実務でこう使う:具体例で見る
こんな場面を想定します
月次で5社へ送る進捗報告書を、見出し3つ・各150〜200字の文章形式(箇条書き禁止)に統一したい、という場面です。
このテクニックをこう使う
【準備】最初に一度だけ:Cowork/Claude Codeの作業フォルダに置くCLAUDE.md(テキストエディタで作成する拡張子.mdのファイルで、毎回の前提をあらかじめ書いておく置き場所です。詳しくは連載第13回で扱います)に、次のように「してほしい形式」を書いておきます。
<report_format> 月次進捗報告書は次の3見出しで、それぞれ150〜200字の文章形式(箇条書き禁止)で書く。 1. 今月の進捗 2. 課題と対応 3. 来月の予定 マークダウンの太字・箇条書きは使わず、滑らかな文章で書くこと。 </report_format>
【依頼】毎回:「A社向けの月次進捗報告書を、CLAUDE.mdのreport_formatに沿って作成してください。今月の実績は添付のExcelを参照し、完成したらWord形式で保存してください。」のように、対象・完了条件・成果物形式を添えるだけで済み、体裁の指定を毎回書き直す必要がなくなります。
このテクニックはチャット(claude.ai)でも使えます。プロンプトの中に直接<report_format>のような指定を書けば同じ効果が得られます。CLAUDE.mdへ書いておく方法はCowork/Claude Code向けで、複数の文書に共通の型を使い回したいときに向いています。
今日から試せること
次にClaudeへ文書作成を頼むとき、「〜しないで」を1つだけ「〜してください」に言い換えて試してみてください。それだけで出力の安定度が変わります。
前回の「長い資料の渡し方」から続けて読むと、資料の渡し方を工夫する技術と、出力の形式を固定する技術の両方を押さえられます。連載の最初から読みたい方は「明確に伝える」・「見本を示す」もどうぞ。Claudeを触ったばかりの方は「Claudeとは何か?ChatGPTとの違いと、経営者から選ばれる5つの理由」・「「AIって何から始めたらいいか分からない」人が最初にやるべき3つのこと」もあわせてご覧ください。
※本記事はAnthropic公式ドキュメントを著者が読み解き、中小企業向けに翻訳・考察したものです。