成長戦略は、いきなり立派な中期経営計画を作る必要はありません。AIと一緒に「今の強み」「狙える市場」「打てる手」を整理していけば、実行できる形に近づいていきます。「なんとなく成長したい」を「具体的な成長戦略」に変えるために、AIをどう使えるかをお伝えします。
皆さんこんにちは!AIコンサルタント(中小企業診断士)の津田です。
今回は「「会社をどうするか、分からない」。経営戦略3課題とAIで自分の答えを見つける全体地図」で触れた3つの課題のうち、「10年後の会社像が描けない社長へ。AIで事業の方向性を言語化する」で将来像を言葉にした先にある、「成長戦略」の設計を掘り下げます。
「もっと大きくしたい」「今のままではまずい気がする」——将来像はぼんやり見えているのに、それを「何を・いつ・どうやって」という具体的な戦略に落とし込めていない。そんなモヤモヤを抱えている社長は少なくありません。
「拡大したい」社長は多いのに、戦略がある会社は少ない
2025年版中小企業白書によれば、中期的な事業方針について「拡大」と回答した中小企業は44.7%にのぼり、2018年以降増加傾向にあります。多くの経営者が「今のままではいけない」「もっと伸ばしたい」と感じているということです。
一方で、独立行政法人中小企業基盤整備機構が2026年3月に公表した調査では、中小企業のAI導入率は20.4%にとどまり、生成AIを本格導入できている企業は7.3%という別調査もあります。「拡大したい」という思いはあっても、それを具体的な戦略や実行の仕組みに落とし込む手段を持てていない会社が多いのが実情です。
「成長したい気持ちはあるのに、戦略という形にできていない」——これは特別なことではなく、多くの中小企業に共通する課題です。
なぜ成長戦略は絵に描いた餅で終わるのか
成長戦略が形にならない理由は、たいてい次のどちらかです。
- 情報を集めて整理する時間がないから——自社の強み・弱み、市場の動き、競合の状況を並べて考える作業は後回しになりがちです
- 一人で考えるには視点が足りないから——社内に壁打ち相手がおらず、思いついたことが「本当に筋のいい戦略か」を検証できません
コンサルタントに中期経営計画の策定を依頼する方法もありますが、費用も時間もかかり、「そこまで大がかりにはしたくない」と感じる社長も多いはずです。この「重すぎる」と「なんとなくのまま放置」の間を埋める手段として、AIが現実的な選択肢になってきています。
AIで成長戦略を設計する3ステップ
① 強み・弱みの棚卸し:「うちが他社より優れている点」「逆に弱い点」「今困っていること」を、AIに思いつくまま話します。SWOT分析のような専門用語は知らなくても、雑談形式で構いません。
② 市場と選択肢の整理:棚卸しした強みをもとに、「この強みが活きそうな市場や顧客層はどこか」をAIと一緒に洗い出します。既存客の深耕・近接業界への展開・新規顧客層の開拓など、選択肢を並べて比較します。
③ 戦略シナリオの比較:出てきた選択肢について、AIに「メリット・リスク・必要な準備」を整理したシナリオを複数案作らせます。そのまま採用するのではなく、「これはうちには無理」「これなら現実的」と絞り込みながら、優先順位をつけていきます。
このプロセスも1回で終わらせる必要はありません。数字が変わるたびに(決算後・大きな受注の後など)、シナリオを見直すつもりで続けるとよいでしょう。
使える公的支援策
- 経営革新計画(承認制度):新製品開発・新サービス提供・新たな生産方式の導入など、成長に向けた新しい取り組みを計画としてまとめ、都道府県知事等の承認を受ける制度です。承認を受けると、日本政策金融公庫の低利融資や信用保証協会の保証枠拡大、一部補助金の加点措置などが受けられます。AIと一緒に整理した成長戦略を、この計画の形に清書していくと実行力が増します
- 商工会議所・商工会:経営指導員が無料で経営分析や事業計画づくりに付き合ってくれます。AIで整理したシナリオを、第三者と一緒に検証する最初の相談先として活用できます
※制度の詳細・要件・申請窓口は年度により変わります。最新情報は中小企業庁公式サイトや商工会議所・商工会でご確認いただくか、当方までご相談ください(2026年7月時点の情報です)。
それでも一人では詰めきれない部分
AIは、情報整理とシナリオ出しをとても軽くしてくれます。ただし、支援の現場でわかったことですが、経営者が一人でAIと作った戦略は「やりたいこと」に寄りやすく、「実行できる体制があるか」「資金は足りるか」という現実的なブレーキが甘くなりがちです。
第三者が「その戦略、社内でどう回しますか」「資金繰りは大丈夫ですか」と問い直すことで、初めて絵に描いた餅ではない、実行できる成長戦略になります。
完璧な中期経営計画を今日中に作る必要はありません。まずはAIに、「うちの会社の強みと弱み、整理を手伝ってほしい」と話しかけてみてください。それが、「なんとなく成長したい」から抜け出す最初の一歩です。
強みと市場が見え、次に新商品や新市場まで具体的に構想を練りたくなったときは、事業構想を整理するために私が開発した「MiraizConcept」というツールもあります。フレームワークに沿ってAIと対話しながら、一人でも構想を形にできるサービスです(miraiz.biz、14日間無料トライアルあり)。
戦略の骨格ができたら、次は新商品や新市場という具体策へ。ひとりで抱え込まず、無料相談で一度お話ししましょう。
【+α:手動で試す/自動化して仕組み化する】
手動(プロンプト):Claudeに「当社は〇〇業、従業員〇名。強み・弱みを整理しながら、拡大に向けた戦略の方向性を一緒に考えたい」と伝え、対話しながらシナリオを作る方法。今日からスマホでも始められます。
自動化(Cowork/Code):決算データや受注実績を定期的に読み込ませ、戦略シナリオを四半期ごとに見直す仕組み。数字が変わるたびに手作業で棚卸しし直す手間を減らせます。
まずは手動で試し、自分に合うと感じたら自動化を検討する、という順番がおすすめです。
よくある質問
Q. 成長戦略はどこから考え始めればいいですか?
まずは「強み・弱みの棚卸し」から始めてください。SWOT分析のような専門用語を知らなくても、雑談形式で今の強みや弱み、困っていることをAIに話すところから始められます。そこから狙える市場や選択肢を整理し、複数の戦略シナリオを比較しながら優先順位をつけていきます。
Q. 中小企業のAI導入率20.4%というデータは何を意味しますか?
独立行政法人中小企業基盤整備機構が2026年3月に公表した調査によるもので、「拡大したい」という思いを持つ経営者は多い一方、それを具体的な戦略や実行の仕組みに落とし込む手段としてAIを本格的に活用できている企業はまだ限られていることを示しています。
Q. AIと一人で作った成長戦略だけで十分ですか?
AIは情報整理とシナリオ出しをとても軽くしてくれますが、経営者が一人でAIと作った戦略は「やりたいこと」に寄りやすく、実行体制や資金面のブレーキが甘くなりがちです。第三者が「社内でどう回すか」「資金繰りは大丈夫か」と問い直すことで、初めて実行できる成長戦略になります。