Claudeへの指示に、一文で「役割」を与えるだけで、以降のやり取り全体のトーンと専門性が変わります。Anthropic公式が「Give Claude a role(役割を与える)」と呼ぶこの原則を、実際の業務場面で解説していきます。

皆さんこんにちは!AIコンサルタント(中小企業診断士)の津田です。

今回は、Claude活用テクニック大全シリーズ第6回として、前回の「出力の形を指定する」に続く基本テクニック「役割を与える(Give Claude a role)」を、実際の業務場面をもとに解説します。

こんな場面はありませんか

ケンジさんの会社では、同じClaudeのチャットで性格の違う相談を3つ抱えています。1つ目は見積書の原価チェック、経理の細かい目線が要る作業です。2つ目は営業提案書の言い回しの見直し、お客様の厳しい目で読む作業です。3つ目は求人票のたたき台づくり、応募者の心に響く言葉選びが要る作業です。ところが同じチャットで聞くと毎回代わり映えのしない答えが返ってきて、経理の厳しさもお客様の目も求職者への響きも、どれも今ひとつ足りません。

公式ドキュメントを読み解く:役割を与えるとは何か

出典:Claude Platform Docs「Prompting best practices」General principles章「Give Claude a role」節(https://platform.claude.com/docs/en/build-with-claude/prompt-engineering/claude-prompting-best-practices)。

公式は次のように説明しています。

"Setting a role in the system prompt focuses Claude's behavior and tone for your use case. Even a single sentence makes a difference:"

1語ずつ訳すと、「system prompt(システムプロンプト)」は、個別の依頼(ユーザープロンプト)とは別に、会話全体にずっと効き続ける「ルール置き場」のことです。皆さんが実際に使う場所で言えば、claude.aiのProjectなら「カスタム指示」欄、CoworkやClaude Codeなら「CLAUDE.md」がこれにあたります。「focuses Claude's behavior and tone(振る舞いとトーンを絞り込む)」は、Claudeの答え方の幅を狭め、狙った方向にまとめること。「even a single sentence makes a difference(一文でも違いが出る)」は、長い説明がなくても一文で結果が変わる、ということです。つまり「会話全体のルールとして役割を一文書いておくだけで、その後の答え方の幅とトーンが定まる」という意味です。

役割とは、Claudeが訓練で学んだ「経理担当者らしい話し方」のような無数のパターンに目印をつける一言であり、人格が入れ替わるのではなくその目印に合う知識・話し方が優先的に呼び出されるため、答えの視点や言葉づかいが変わります。

公式が示す例はこうです。

system="You are a helpful coding assistant specializing in Python."

日本語にすると「あなたはPythonを専門とする、頼りになるコーディングアシスタントです」という一文です。この一文をシステムプロンプトに置くだけで、以降のやり取り全体が「Pythonのコーディングアシスタント」としての立場に統一されます。

第1〜5回の技術は個別の依頼を精緻にする技術でしたが、役割を与えるのは会話全体に一度だけ効く土台をつくる技術です。claude.aiのアカウント全体なら「Instructions for Claude」も同じように使えます。Projectを使わないふつうの1回きりのチャットには専用の置き場所がないため、最初のメッセージに役割を書きます。会話には残りますが、Project指示ほど強くは効きません。

役割設定は「会話全体に効く土台」 システムプロンプトに役割を一文設定すると、経理チェック・営業提案チェック・求人票づくりの3つの相談すべてでトーンと専門性が揃う。役割設定なしの場合は、視点がぶれて当たり障りない答えに寄っていく。 役割設定は「会話全体に効く土台」 システムプロンプトに一文 経理チェック 営業提案チェック 求人票づくり トーンと専門性が3つとも揃う 役割設定なしの場合 当たり障りない答え 当たり障りない答え 当たり障りない答え 視点がぶれて、無難な一般論に寄っていく
図:システムプロンプトに役割を一文設定すると、経理チェック・営業提案チェック・求人票づくりの3つの相談すべてでトーンと専門性が揃います。設定しない場合は、視点がぶれて当たり障りない答えに寄っていきます。

このテクニックは何を解決するのか

使わないと、性格の違う相談を同じチャットで続けるうちに答えの「視点」が均され、経理の厳しさもお客様の目も求職者への響きも無難な一般論に寄っていきます。毎回説明し直せば防げますが、手間がかかります。

役割を一文設定すれば、以降のやり取り全体でトーンと専門性が揃い、説明し直す手間もなくなります。

効くのは、同じチャットやプロジェクトで似た相談を繰り返す場合です。一度きりの質問なら、第1回の「明確に伝える」のほうが効きます。

実務でこう使う

ここからはclaude.aiでの手順です。Cowork・Claude Codeでは同じ内容をCLAUDE.mdに書けば反映されます。

【準備】最初に一度だけ:Projectの「カスタム指示」欄、アカウント設定の「Instructions for Claude」、または単発の相談なら最初のメッセージに「あなたは○○の立場です」の一文を書きます。

例(経理チェック用):

あなたは中小企業の経理担当者です。原価に敏感な視点で、数字の妥当性を厳しく確認する立場で答えてください。

【依頼】毎回:

添付の見積書(A社向け、木材加工の外注案件)について、材料費と外注費の配分が同業他社の相場より割高になっていないか、経理の視点で確認してください。気になる点を箇条書き3点以内で教えてください。

対象・完了条件・成果物の形式の3要素が入っているため、役割設定と組み合わせればそのまま使えます。

今日から試せること

次にClaudeを使うとき、Projectのカスタム指示に「あなたは○○の立場で答えてください」の一文を加えてみてください。トーンと専門性の変化を体感できます。

役割設定の使い分けやCLAUDE.md管理は、AI活用伴走支援でもご相談いただけます。

前回の「出力の形を指定する」から続けて読むと、指示の書き方全般を押さえられます。連載の最初から読みたい方は「明確に伝える」・「理由を添える」・「見本を示す」・「長い資料の渡し方」もどうぞ。Claudeを触ったばかりの方は「Claudeとは何か?ChatGPTとの違いと、経営者から選ばれる5つの理由」もあわせてご覧ください。

※本記事はAnthropic公式ドキュメントを著者が読み解き、中小企業向けに翻訳・考察したものです。