複雑な依頼は一括で頼まず、手順ごとに分けてClaudeに渡すと、精度が上がります。Anthropicが提唱する設計パターン「Prompt chaining(プロンプトチェイニング)」を、実際の業務場面で解説していきます。
皆さんこんにちは!AIコンサルタント(中小企業診断士)の津田です。
今回は、Claude活用テクニック大全シリーズ第7回として、前回の「役割を与える」に続く技術「プロンプトチェイニング(Prompt chaining)」を、実際の業務場面をもとに解説します。
こんな場面はありませんか
ケンジさんの会社(商社)に、取引先A社から倉庫什器一式(スチールラック20台・パーテーション10枚、納期は来月末)の見積り依頼が届きました。一括で「この案件の見積書を作って」とClaudeに頼むと、材料費の項目が抜けていたり、金額の根拠が曖昧なまま文章だけ整った見積書が返ってきたりします。結局、出す前に自分で項目を洗い出し直し、金額も検算し、文章も書き直す羽目になり、Claudeに頼んだはずが二度手間になっています。
公式ドキュメントを読み解く:プロンプトチェイニングとは何か
出典:Anthropic Engineering Blog「Building Effective AI Agents」(2024-12-19公開)Workflow: Prompt chaining節(https://www.anthropic.com/engineering/building-effective-agents)。
公式は次のように説明しています。
"Prompt chaining decomposes a task into a sequence of steps, where each LLM call processes the output of the previous one. You can add programmatic checks (see "gate" in the diagram below) on any intermediate steps to ensure that the process is still on track."
1語ずつ訳すと、大きな仕事を一連の手順に分解し(decomposes a task into a sequence of steps)、各回のやり取りが前の回の出力を材料に進み(each LLM call processes the output of the previous one)、途中に人の目視でなくプログラムによる自動チェック(programmatic checks)という関門(gate)を置いて脱線を防ぐ、という意味です。
いつ使うべきかも公式は示しています。
"This workflow is ideal for situations where the task can be easily and cleanly decomposed into fixed subtasks. The main goal is to trade off latency for higher accuracy, by making each LLM call an easier task."
決まった手順に迷いなくきれいに分けられる作業に向いていて、時間を犠牲にして精度を上げる(trade off latency for higher accuracy)、つまり1回のやり取りを簡単にすることで精度を優先するのが狙いです。
手順の区切り方は人が決め、Claudeが決めるのは各手順の中身だけです。分かれ道をClaudeに判断させるルーティングや、手順の数自体をClaudeが決めるオーケストレーター・ワーカー(後の回)とは異なります。
対象製品はチャット・Cowork(複数手順の作業をまとめて任せられる作業モード)・Claude Code(開発者向けのターミナルツール)いずれでも使えます(チャットは手動でつなぎ、Cowork・Claude Codeは自動)。
このテクニックは何を解決するのか
一括で頼むと、項目の洗い出し・金額計算・文章化を1回のやり取りで同時にこなすため、案件が複雑になるほど計算や項目の抜けが雑になりやすくなります。見直すときも、どの手順で間違えたのか分からず、見積書全体を読み直すことになります。
手順ごとに区切って進めれば、①の項目が甘ければそこで直し、②の金額がおかしければそこで直せます。やり取りの回数と時間を代わりに払って、精度を上げる技術です。
このメリットが効くのは、見積書・契約書レビュー・記事執筆など、決まった手順にきれいに分けられる作業です。「どの窓口に振り分けるか」という分かれ道がある作業には、別の技術(ルーティング)の方が向きます。
実務でこう使う
ここからはチャットでの手順です。Cowork・Claude Codeでは同じ3手順を1回の依頼にまとめても、前の手順の出力を自動で引き継いでくれます。
【準備】最初に一度だけ:案件概要(品目・数量・納期)と自社の単価表をチャットに貼り付けられる状態にしておきます。手順は「①項目整理→②積算→③文章化」の3段階に区切ると決めておきます。
【依頼】毎回(①→②→③の順に、前の回答を踏まえて聞く):
①「A社向け倉庫什器一式の見積り依頼です(スチールラック20台、パーテーション10枚、納期は来月末)。見積書に入れるべき項目を、材料費・外注費・諸経費に分けて箇条書きで挙げてください。」 ②「今挙げてもらった項目それぞれについて、添付の単価表をもとに概算金額を計算し、表形式で整理してください。合計金額も出してください。」 ③「この積算結果をもとに、A社向けの見積書の本文を、そのまま送れる丁寧な言い回しで作成してください。」
今日から試せること
複雑な依頼をするときは、一度に全部頼まず「まず項目だけ」に分けてみてください。手順の区切り方はAI活用伴走支援でもご相談いただけます。
前回の「役割を与える」から続けて読むと、会話全体に効く土台づくりと、複雑な依頼の分解の両方を押さえられます。連載の最初から読みたい方は「明確に伝える」・「理由を添える」・「見本を示す」・「長い資料の渡し方」・「出力の形を指定する」もどうぞ。
※本記事はAnthropic公式ドキュメントを著者が読み解き、中小企業向けに翻訳・考察したものです。