前回は、外部の人と対話しながら、受注業務をマニュアルにまとめました。今回は、棚卸し表(05)で真っ先に名前が挙がった「FAX注文書の品番の読み替え」です。

佐藤さんの困りごと ― 「たぶんこれ、で決めています」

月曜の朝、FAXが12枚届いていました。ミナト精工で受注を担当している佐藤です。取引先ごとに注文書の書式はバラバラで、書いてあるのは相手先の品番。それを自社の品番に読み替えるところから、私の一日が始まります。

品番の対応表はあるのですが、更新が追いついていません。結局は過去の注文書を見ながら「たぶんこれ」と決めています。間違えると、違う部品を作ってしまうかもしれません。この一言の「たぶん」が、いちばん怖いのです。

受注から請求までの流れ ― 今回変えるのは「品番の読み替え」 FAX注文書 品番の読み替え 受注入力 見積・手配 納品書 請求書 ▲ 今回はここ AIには「いきなり答え」ではなく、2段階で頼みます ①品番対応表②FAX注文書の内容 手順1対応表の該当行を 人が見比べる対応表と合っているか 手順2自社品番を回答 そのまま抜き出させる 抜き出した行だけが根拠 ポイント ・対応表と注文書を先に渡し、お願いごとは最後に書きます(資料が先、質問が最後) ・「合っているか」を決めるのは人間です。AIは確認しやすい材料を並べる役目です
受注から請求までの流れのうち、今回変える「品番の読み替え」。資料を渡し、該当行を抜き出させ、人が見比べてから答えさせる2段階の手順です。

やってみた ― 「抜き出してから答えて」と頼み直す

社長に「AIを使ってみて」と言われたので、Claudeのチャット画面に対応表と注文書の内容を貼り、そのまま「自社品番を教えて」と聞いてみました。すると、もっともらしい品番が返ってきました。ただ、その品番が対応表のどこから来たのか分からず、結局ぜんぶ自分で見直すことになりました。

そこで、公式ドキュメントで見つけた「2段階方式」で頼み直しました。最初に対応表の該当行をそのまま抜き出してもらい、次にその行だけを根拠に答えてもらいます。

<対応表>
(Excelの品番対応表をここに貼り付け)
</対応表>

<注文書>
(FAXの注文内容をここに貼り付け)
</注文書>

手順1:注文書の各行について、対応表の中から関係しそうな行を、
一文字も変えずにそのまま抜き出してください。
手順2:手順1で抜き出した行だけを根拠に、各行の自社品番を答えてください。
抜き出せなかった行は推測せず「該当なし」と書いてください。

返ってきた内容は、注文書の1行ごとに「対応表のこの行が根拠です」と並び、その下に自社品番が書かれていました。対応表に似た品番が2つあるものは、はっきり「該当が2つあります」と残してくれました。私は抜き出された行と注文書を見比べるだけで済み、「たぶん」で決める場面がぐっと減りました。

なぜ2段階にするのか

佐藤さんが頼んだのは、資料から関係する部分を先に抜き出させてから答えさせる、2段階の頼み方です。

この方法は、長い資料を渡すときの定番のコツです。資料の中から関係する部分を先に引用させてから、質問に答えさせます。AIが資料全体の情報に引きずられず、答えに必要な部分に集中しやすくなる、という考え方です。

普通に「自社品番を教えて」と聞いても、答えは返ってきます。違いは、答えの根拠が目に見えることです。抜き出した行が対応表と一致しているかは、人が数秒で確認できます。AIの答えを信じるか疑うかではなく、確認しやすい形に直してもらう、という使い方になります。

ここで大切なのは、判断の主体です。抜き出す手順を決めているのは佐藤さん(人間)で、AIが自分で手順を組み立てているわけではありません。最終的に「この品番で正しい」と決めるのも人間です。

もうひとつ、資料の渡し方にもコツがあります。対応表と注文書を <対応表> のようなタグで区切り、資料を先に、お願いごとを最後に書くと、AIが資料とお願いごとを混同しにくくなります。

なお、2段階にしても間違いがゼロになるわけではありません。たとえば手書きで読みにくいFAXは、AIが文字を読み違えることがあります。読み取り精度の限界は、次の公式ドキュメントにも書かれています。

公式ドキュメントより①
"quote relevant parts of the documents first"
(日本語訳:資料の中の関係する部分を、先に引用させる)
出典:Claude Platform Docs「Prompting best practices」Long context prompting
https://platform.claude.com/docs/en/build-with-claude/prompt-engineering/claude-prompting-best-practices
※これは開発者向けの文書ですが、Claudeのチャット画面でも考え方は同じです。受注業務では「資料」を対応表、「関係する部分」を該当行と読み替えてください。
公式ドキュメントより②
"Claude might hallucinate or make mistakes when interpreting low-quality, rotated, or very small images"
(日本語訳:画質が悪い、回転している、とても小さい画像では、作り話や読み間違いをすることがある)
出典:Claude Platform Docs「Vision」Limitations
https://platform.claude.com/docs/en/build-with-claude/vision
※FAXを画像で読み込ませる場合にあてはまります。画像で渡すときは、できるだけ鮮明な状態で、まっすぐにして使ってください。

佐藤さんの不安 ― 「お客さんの注文情報をAIに入れて大丈夫?」

佐藤です。いちばん気になったのは、お客さんの注文情報をAIに入れて大丈夫なのか、という点でした。取引先の名前、担当者の名前、金額。個人情報やセキュリティは大丈夫なのか、と手が止まりました。

佐藤さんのような不安は、私が支援している現場でも聞きます。私は、機微な情報はAIでは使わない、を基本にしています。そのうえで、「個人情報は入れない」と一括りにせず、人の情報をどう扱うかという個人情報保護と、情報が漏れたり勝手に見られたりしないよう守る情報セキュリティに分けて考えるようお伝えしています。

個人情報保護の面では、何が機微な情報なのかは会社ごとに違うので、会社として基準を作り、入れてよい情報と入れない情報を細かく決めます。佐藤さんの会社は、社長と相談して、品番と数量は入れてよい、取引先の担当者名や連絡先、金額は入れない、と決めました。読み替えの作業は、品番と数量だけで足ります。

情報セキュリティの面では、権限や設定を理解して使います。個人向け(Free・Pro・Max)は、設定の「Help Improve our AI models」のスイッチで、学習に使うかどうかを選べます。オフにすると新しいチャットは将来の学習に使われません(安全確認のために選ばれた会話などは例外。2026年8月3日更新の公式案内)。現在の状態は設定画面で確かめてください。会社向け(Claude for WorkやAPIなど)は、入力と出力を既定では学習に使わないと公式に書かれています(フィードバックを送った場合などは例外。2026年8月18日更新)。

そして、ツールの使い方にも注意します。どのプランのどのツールに入れるかで、情報の扱いは変わります。会社として使ってよいツールを決め、AIの答えは必ず抜き出し行と見比べてから受注入力に使ってください。契約上の守秘義務などの扱いは、私は法律の専門家ではないので、弁護士などにご相談ください。

今回の部品:品番読み替えの指示文
対応表と注文書をタグで区切り、「該当行を抜き出してから答える」2段階で頼む指示文ができました。05の全体フロー図でいえば、①「注文を受ける」の品番読み替えが埋まったことになります。この部品は、17回で受注エージェントに組み込みます。

自社でやるなら

明日試せるのは、1枚の注文書だけです。品番対応表のうち、その注文に関係する数十行をコピーし、さきほどのプロンプトの形で貼ってみてください。AIに入れてよい情報は、先に会社で決めておいてください。

大切なのは、「正解を出させる」ことより「確かめやすくしてもらう」ことです。うまくいったら、次は、取引先ごとの締め日や納品書の書き方などの会社のルールを、AIに読ませたままにしておく方法に進みます。次回は「取引先ごとの掛け率・締め日・特別条件が覚えきれない」を取り上げます。

※本記事はAIを活用して作成しています。登場する「ミナト精工」「佐藤さん」は架空の設定です。