複数の取引先の方針を毎回説明し直す手間は、メモリ(Memory Tool)という仕組みにClaudeが自分で学んだことを書き残しておくだけでなくなります。Claude公式ドキュメントが示す「メモリ」というこの仕組みを、実際の業務場面で解説していきます。

皆さんこんにちは!AIコンサルタント(中小企業診断士)の津田です。

今回は、Claude活用テクニック大全シリーズ第15回として、前回の「Agent Skills」に続く技術「メモリ」を、実際の業務場面をもとに解説します。

公式ドキュメントを読み解く:これはどんな技術か

出典:Claude Platform Docs「Memory tool」(https://platform.claude.com/docs/en/agents-and-tools/tool-use/memory-tool)。2026年8月時点で内容を確認しました。

公式の定義は次のとおりです。

"The memory tool lets Claude store and retrieve information across conversations in a directory of memory files."

"store and retrieve information across conversations"は会話をまたいで情報を保存し取り出す、"a directory of memory files"はメモリ専用のファイル置き場、という意味です。続けて公式は、コンテキストウィンドウ(Claudeが一度に読み込んでいられる情報量)に全部を詰め込まなくても知識を蓄積できる、と説明します。つまりClaudeは会話が終わるたびにファイルへメモを書き残し、次の会話ではそのファイルを読み返して続きから話を進められます。

もう一点、公式は次のように説明します。

"Memory supports just-in-time context retrieval."

「必要になったそのときだけ情報を呼び出す方式」という意味です。あらかじめ関連情報を全部読み込むのではなく、学んだことをファイルに記録し必要に応じて読み返すため、無関係な情報まで毎回すべて読み込むわけではありません。

仕組みとしては、Claudeが会話の最初にメモリ専用フォルダ/memoriesを確認して必要なファイルを読み、学んだことを書く、または書き換えるという手順で動きます。実際の保存先とやり方は、Claudeを組み込むアプリを作る側が用意します。公式はこれを「client-side」(Claude自身ではなくアプリ側が保存を実行する)と呼びます。

前回(第14回)のAgent Skillsは人が用意した手順書を該当する依頼のときだけ呼び出す仕組みでしたが、メモリはClaude自身が学んだことを自分でファイルに書き残し、関係するファイルだけ選んで読み返す点が異なります。第12回のコンテキスト管理は会話が長くなったときに要約する技術でしたが、メモリは会話(セッション)をまたいで情報を持ち越す点で役割が異なります。

対象製品を明記します。このメモリ機能はAPI(開発者がClaudeを自社アプリに組み込むための土台)の機能で、保存先は開発者自身がプログラムする必要があり、claude.aiに「メモリを有効にする」ボタンはありません。ただしCoworkにはこの考え方をもとにした記憶の仕組みがあらかじめ組み込まれており、訂正や方針を伝えるとClaudeが自動的にメモとして書き残し、次回以降に読み返します。本記事自体も、その仕組みが動く状態で書かれています。

会話をまたいで学んだことを持ち越す仕組み 会話1回目でClaudeが「A社は品質重視」と学んだ内容を/memoriesフォルダへ記録し、後日の会話2回目でそのファイルを読み返して踏まえた提案を作る、という2セッションの流れを対比する図。 会話をまたいで学んだことを持ち越す仕組み 会話1回目 「A社は品質重視」と伝える Claudeが学んだことを記録 /memories フォルダ A社の方針をファイルとして保存 会話2回目(後日) 「A社向け提案を作って」と依頼 説明し直さなくても伝わる ファイルを読み返して 品質重視を踏まえた提案を作成
図:会話1回目でClaudeが学んだ内容を/memoriesフォルダへ記録し、後日の会話2回目ではそのファイルを読み返して踏まえた提案を作ります。

このテクニックは何を解決するのか

このテクニックを使わない場合、やり取りは会話が終わるたびにリセットされます。前回の方針を毎回の冒頭で説明し直す必要があり、忘れれば的外れな提案が返ってきます。取引先が多いほど「思い出させるコスト」は積み重なります。

メモリを使うと、Claudeが学んだことを自分でファイルに残し、関係する場面で自動的に読み返すため、説明を省いても経緯を踏まえた提案が返ってきます。「毎回チャットに貼り付ければ同じでは」という疑問もありますが、貼り付けは人の手作業が要るのに対し、メモリはClaude自身が判断して書き残し、関係する場面でだけ自動的に呼び出す点が固有の価値です。効果が出やすいのは同じ取引先・案件で複数回やり取りする業務で、単発の質問では恩恵は小さくなります。

実務でこう使う:具体例で見る

こんな場面を想定します

月に何度も同じ取引先へ提案書を作る営業担当を想定します。A社は品質重視の方針だと以前伝えていたのに、新しい会話では毎回説明からやり直している場面です。

このテクニックをこう使う(Coworkでの手順です。claude.aiやAPIに自分で組み込む場合は仕組みが異なります)

【準備】最初に一度だけ
追加設定は不要です。訂正や方針を伝えると自動的に記憶しますが、明示的に覚えさせたい情報は次のように伝えます(開発者が自社アプリに組み込む場合は、Claude Platform Docsに沿って保存先を自分で用意します)。

「A社は価格よりも品質を重視する方針です。今後A社向けの提案書ではこの前提を必ず踏まえてください。覚えておいてください。」

【依頼】毎回
準備ができていれば、依頼文は前提を繰り返さなくても済みます。

「A社向けの新商品提案書の骨子を、以前伝えたA社の方針(品質重視)を踏まえ、価格を前面に出さない構成でWord文書1枚にまとめてください。」

一度覚えさせておけば、前提を繰り返さなくても記憶したファイルを読み返して踏まえた提案を返してくれます。

今日から試せること

次の会話でClaudeに「前回話した内容を覚えておいて」と伝え、後日別の会話で本当に思い出してくれるか試してみてください。自社の業務にどう組み込めるか迷ったら、AI活用伴走支援の無料相談へどうぞ。

前回の「Agent Skills」から続けて読むと、得意技をあらかじめ教え込む技術と、前回のやりとりを覚えていてもらう技術の両方を押さえられます。連載の最初から読みたい方は「明確に伝える」・「理由を添える」・「見本を示す」・「長い資料の渡し方」・「出力の形を指定する」・「役割を与える」・「プロンプトチェイニング」・「自己チェックさせる」・「評価者・最適化ループ」・「ルーティング」・「考えさせる・急がせる」・「コンテキスト管理」・「CLAUDE.md」もどうぞ。

※本記事はAnthropic公式ドキュメントを著者が読み解き、中小企業向けに翻訳・考察したものです。
※本記事はAIを活用して作成しています。