「言うだけで終わる」か「実際に手が動く」かの分かれ目を作っているのが、Tool Use(ツール利用)という仕組みです。毎月末、経理担当者が20件前後の請求書ファイルを1つの一覧表にまとめる作業をしています。ある月、「今月の請求書フォルダを確認して、品目・金額・支払期日を一覧表にまとめてください」とCowork(Claudeがファイルを扱える作業環境)に頼んだところ、返ってきたのは「このように整理するとよいと思います」という説明文だけで、実際のファイルは1つも作られていませんでした。結局、自分の手でExcelを開き、説明どおりに入力し直す羽目になった――という経験は、Claudeを業務で使い始めた方によくあります。
皆さんこんにちは!AIコンサルタント(中小企業診断士)の津田です。
今回は、Claude活用テクニック大全シリーズ第16回として、前回の「メモリ」に続く技術「Tool Use(ツール利用)」を、実際の業務場面をもとに解説します。
公式ドキュメントを読み解く:これはどんな技術か
出典:Claude Platform Docs「Tool use with Claude」(https://platform.claude.com/docs/en/agents-and-tools/tool-use/overview)、および「How tool use works」(https://platform.claude.com/docs/en/agents-and-tools/tool-use/how-tool-use-works)。2026年8月時点で内容を確認しました。
公式の定義は次のとおりです。
"Tool use lets Claude call functions that you define or that Anthropic provides. Claude determines when to call a tool based on the user's request and the tool's description."
functionsは「あらかじめ用意された個別の作業(ファイル操作・検索・送信など)」、whenを判断するのは利用者でなくClaude自身、という意味です。つまりClaudeは「できること」の一覧を持ち、依頼の文面と各ツールの説明文を照らし合わせて自分で判断し、呼び出します。
重要なのは、Claude自身がその場で作業を実行しない点です。公式は次のように説明します。
"Tool use is a contract between your application and the model."
"The model never executes anything on its own."
contractは「取り決め」、後半は「モデル自身は何ひとつ自力では実行しない」という意味です。Claudeは要求を返すだけで、実際にファイルを保存したり外部システムを動かしたりする実行部分は、読者が普段使っているCoworkやClaude Codeが担っています。
冒頭で提案文しか返ってこなかったのは、この判断が曖昧だったためです。「Prompting best practices」は次のように述べます。
"Claude's latest models are trained for precise instruction following and benefit from explicit direction to use specific tools. If you say "can you suggest some changes," Claude will sometimes provide suggestions rather than implementing them, even if making changes might be what you intended."
「変更してもらえますか」とだけ伝えると、実行してほしくても提案止まりになることがある、という意味です。「整理して」でなく「実際にファイルを作成・保存してください」と一段具体的に伝えることが、Tool Useを正しく引き出す鍵になります。
対象範囲は製品で異なります。チャット(claude.ai)ではWeb検索やコード実行(表・グラフ作成)が組み込みで使えます。Cowork・Claude Codeでは、ファイルの読み書きや接続した外部システム(メール・カレンダー・社内ツール等)の操作まで幅が広がります。外部システムとの接続規格は「MCP」と呼ばれ第18回で扱います。前回(第14回)のAgent Skillsは「手順を教え込む」仕組みでしたが、Tool Useは「実際に実行する手段」を与える仕組みという違いがあります。
このテクニックは何を解決するのか
このテクニックを知らないと、Claudeは会話の中で言葉を返すだけの相手にとどまり、ファイルの保存・送信・最新データの取得といった、後に残る作業は結局すべて自分の手で行うことになります。頼んだつもりなのに何も進んでいない、という状態です。使うことで変わるのは、依頼が具体的であればClaude自身が「これは提案ではなく実行すべき依頼だ」と判断し、ファイルの作成・編集から外部システムの操作まで一気に任せられる点です。これは普通のチャットのやり取りだけでは実現できません。会話は言葉を生成して返すだけで完結し、モデル自身は何も実行しない構造だからです。効果が出るのは、①作業の結果としてファイルや記録が残る必要がある業務、②最新の外部情報が要る業務、③外部システムと連携する業務、の3つに当てはまる会社です。
実務でこう使う:具体例で見る
こんな場面を想定します
先ほどの請求書一覧の場面に戻ります。「整理して」という依頼のままでは提案止まりになりやすいため、実行してほしいことを明確に伝える形に変えます。
このテクニックをこう使う(ここからはCoworkでの手順です)
【準備】最初に一度だけ
Coworkの作業フォルダに、今月分の請求書ファイル一式を置いておきます。保存先のファイル名(例:「請求書一覧.xlsx」)も、依頼文かCLAUDE.mdに一度書いておきます。
【依頼】毎回
「今月の請求書フォルダにある請求書を確認し、品目・金額・支払期日を『請求書一覧.xlsx』に一覧化してください。提案ではなく、実際にファイルを作成・保存するところまで実行してください。最後に合計金額も記載してください。」
これで返ってくるのは説明文ではなく、実際に保存されたファイルになります。
今日から試せること
次の依頼では、文末を「〜してもらえますか」ではなく「実際に〜してください」に変えてみてください。それだけで提案止まりの返事が、手元に残る成果物に変わります。組み込み方に迷ったら、AI活用伴走支援の無料相談へご相談ください。
前回の「メモリ」から続けて読むと、前回のやりとりを覚えていてもらう技術と、Claudeに実際に手を動かしてもらう技術の両方を押さえられます。連載の最初から読みたい方は「明確に伝える」・「理由を添える」・「見本を示す」・「長い資料の渡し方」・「出力の形を指定する」・「役割を与える」・「プロンプトチェイニング」・「自己チェックさせる」・「評価者・最適化ループ」・「ルーティング」・「考えさせる・急がせる」・「コンテキスト管理」・「CLAUDE.md」・「Agent Skills」もどうぞ。
※本記事はAnthropic公式ドキュメントを著者が読み解き、中小企業向けに翻訳・考察したものです。
※本記事はAIを活用して作成しています。